AIのトレンド
フロンティアAIシステムは、計算資源、ハードウェア性能、ソフトウェア効率、投資の増加によって急速に進歩している。このダッシュボードでは、その動態を探る。
AIの進歩を牽引しているのは何か。その大部分を占めるのはスケールである。AIシステムをより多くの計算資源、電力、データで学習させると、一貫して性能が向上してきた。2010年以降、注目すべきAIモデルの学習に使われる計算量は年4.5倍のペースで増加している。一方で、研究者たちは基盤となるアルゴリズムの効率を大幅に高めてきた。毎年、同じ性能を3分の1の計算量で達成できるようになっている。
この学習計算量の大規模な拡大は、3つの要因から生じている。より多くのチップを並列に配置すること、学習をより長く実行すること、そしてますます高性能になるAIプロセッサを活用することである。その影響は顕著だ。学習コストは年3.5倍のペースで上昇し、必要な電力は毎年倍増している。今日の最先端のAI学習実行は数十〜数百メガワットを消費しており、中規模の発電所に匹敵する。これらのトレンドは2030年まで続く見込みである。
読み方:原ページの最終更新は2026年2月5日で、数値は2026年10月1日の取得時点のものである。増加率は「年◯倍」(1年あたりの増加倍率)、「倍増期間」(2倍になるまでにかかる期間)、「年◯桁(OOM)」(1年あたりに増える桁数。OOM は order of magnitude の略で、10倍を1桁とする)の3通りで示す。信頼区間はいずれも90%信頼区間である。
モデルの性能
モデルの能力
ECIのフロンティアは、推論モデルの登場以降、年14ポイントのペースで前進している。
最初の推論モデル(OpenAIのo1-miniとo1-preview)が2024年9月に登場して以降、Epoch能力指数(ECI)の最先端(フロンティア)は年14ポイントのペースで直線的に前進している。非推論モデルでは年6ポイントである。
モデルの能力
年14 ECIポイント
ECIのフロンティアは、推論モデルの登場以降、年14ポイントのペースで前進している。
90%信頼区間:+12〜+17 ECI
SOTAモデルと一般消費者向けハードウェアのモデル
8か月
最先端のAI性能は、1年以内に一般消費者向けハードウェアでも利用できるようになる。
一般消費者向けハードウェアで実行できるモデルは、フロンティアと同程度のペースで性能を伸ばしており、その遅れは平均で約6〜12か月である。
LLMのコンテキストウィンドウ
年30倍
倍増期間:2.4か月
年1.5桁(OOM)
LLMのコンテキストウィンドウは、2023年以降、年30倍のペースで拡大している。
90%信頼区間:10〜50倍(倍増期間2.1〜3.6か月、年1.0〜1.7桁)
現在のLLMが1回のクエリで取り込めるトークン数には上限があり、これはしばしばコンテキストウィンドウと呼ばれる。2023年半ば以降、最長のLLMコンテキストウィンドウは年約30倍のペースで拡大してきた。その入力を有効に活用する能力は、さらに速く向上している。2つの長文脈ベンチマークでは、トップモデルが正答率80%に達する入力長が、過去9か月で250倍以上に伸びた。
AI企業
計算資源の保有量の伸び
AIチップの保有総量が持つ計算能力の合計は、年3.4倍のペースで増えている。
収益データ、その他の財務開示、アナリストレポートに基づくと、AIチップの保有総量の計算能力は2022年以降、年3.4倍のペースで増えており、約7か月ごとに倍増している。
計算資源の保有量の伸び
年3.4倍
倍増期間:6.8か月
年0.53桁(OOM)
AIチップの保有総量が持つ計算能力の合計は、年3.4倍のペースで増えている。
90%信頼区間:3.2〜3.7倍(倍増期間6.4〜7.2か月、年0.51〜0.57桁)
OpenAIの売上成長
年3.2倍
倍増期間:7.2か月
年0.51桁(OOM)
OpenAIの年換算売上高は、2024年以降、年3.2倍のペースで伸びている。
90%信頼区間:3.0〜3.4倍(倍増期間6.8〜7.6か月、年0.48〜0.53桁)
フロンティアモデル開発を専業とする最大手のOpenAIは、2024年以降、年換算売上高を年3倍のペースで伸ばしてきた。これは、2022年のChatGPT公開以降のさらに急速な成長に続くものである。OpenAIにとって最大の独立系競合であるAnthropicは、2023年以降、年9倍超というさらに急速な売上成長を見せている。
フロンティアの推論実行向け計算資源
30%
2024年にOpenAIが計算資源に費やした支出のうち、推論実行(インファレンス)に使われたのはわずか30%だった。
OpenAIは週あたり数億人のアクティブユーザーを抱えているが、財務関連の報道に基づくと、2024年に同社が計算資源に費やした支出のうち、モデルの推論実行が占める割合は半分に満たなかった。
この配分は企業によって異なる可能性が高く、利用規模の拡大に伴って変わるかもしれない。研究開発(R&D)に充てられた70%のうち、大半は公開モデルの最終的な学習実行ではなく、研究と実験に使われた。OpenAIが2024年に学習させた最大のモデルであるGPT-4.5は、研究開発予算の約8%を使ったと推定される。
フロンティアAIへの投資
3,700億ドル
フロンティアAIラボは3,700億ドル超を調達している。
OpenAI、Anthropic、xAIを中心とするフロンティアAI専業のスタートアップ群は、暫定的な資金調達や条件付きの資金調達契約を除いて、累計で約3,700億ドルを調達している。
モデルの学習
学習計算量
フロンティア言語モデルの学習計算量は、2020年以降、年5倍のペースで増加している。
フロンティア言語モデルの学習に使われる計算量は、指数関数的に増加してきた。2020年以降、上位5モデルのトレンドは約10,000倍に伸びている。
学習計算量
年5倍
倍増期間:5.2か月
年0.7桁(OOM)
フロンティア言語モデルの学習計算量は、2020年以降、年5倍のペースで増加している。
90%信頼区間:4〜6倍(倍増期間4.6〜6.0か月、年0.6〜0.8桁)
ソフトウェアの進歩
年3.0倍
倍増期間:7.6か月
年0.5桁(OOM)
事前学習の計算効率は年約3.0倍のペースで向上している(同じ性能に必要な計算量が年約3分の1になる)。
90%信頼区間:2.8〜4.4倍(倍増期間5.6〜8.1か月、年0.4〜0.6桁)
2012〜2024年に公開された231の言語モデルに基づくと、一定水準の言語モデリング性能に到達するのに必要な計算量は、年約3倍のペースで減少している。
下流の能力の実際の進歩は、さらに速い可能性がある。事後学習による改善(特にコーディングなどの分野)が、事前学習による向上に上乗せされるためである。
学習コスト
年3.5倍
倍増期間:7か月
年0.5桁(OOM)
フロンティア言語モデルの学習コストは、2020年以降、年3.5倍のペースで増加している。
90%信頼区間:2.8〜4.4倍(倍増期間6〜8か月、年0.4〜0.6桁)
著名な言語モデル42件の推定学習期間とハードウェアのレンタル費用に基づくと、フロンティアの学習コストは2020年以降急上昇しており、GPT-3の約200万ドルから、2024年の最大規模の学習実行では3億9,000万ドル近くに達している。
データセンター
最大のAIデータセンター
既知で最大のAIデータセンターは、NVIDIA H100チップ110万個分に相当する計算能力を持つ。
テネシー州メンフィスにあるSpaceXAIのColossus 2は、推定計算能力が110万H100換算(H100e)で、既知のAIデータセンターとして最大である。Meta Hyperionは、2028年1月までに370万H100換算と、その3倍を超える計算能力を持つ見込みである。
最大のAIデータセンター
110万 H100e
既知で最大のAIデータセンターは、NVIDIA H100チップ110万個分に相当する計算能力を持つ。
建設期間
2.1年
ギガワット級のデータセンターは、約2年で建設できる。
90%信頼区間:1〜3.6年
総施設電力が1GWを超える見込みの計画中または建設中のデータセンター・プロジェクト7件に基づくと、着工からギガワット規模に達するまでの期間の中央値は2年強である。電力の推定は、衛星画像、許認可、企業の開示情報をもとにしている。これらの計画は変更される可能性がある。
1ギガワットあたりのコスト
380億ドル
IT電力1ギガワットの典型的なAIデータセンターには、初期設備投資(CapEx)として約380億ドルかかる。
ギガワット級の施設は大規模な産業プロジェクトであり、米国の約100万世帯分に相当する電力を消費する。初期設備投資の約70%はGPUとネットワーク・インフラに充てられ、残りの大半は電源・冷却インフラと建屋の躯体が占める。
ハードウェア
1ドルあたりのチップ性能
AIチップの1ドルあたり性能は、2023年以降、年49%向上している。
2023年以降、各四半期にAIチップへ支出した1ドルで得られる性能は、平均して2025年の実質ドル換算で年約49%向上している。向上は、支出が新しい世代のチップへ移るたびに断続的に起きている。価格性能比は2024年半ばまでほぼ横ばいだったが、Blackwellチップが新規支出の過半を占めるようになるにつれて約2倍になった。
1ドルあたりのチップ性能
年1.49倍
倍増期間:1.7年
年0.17桁(OOM)
AIチップの1ドルあたり性能は、2023年以降、年49%向上している。
90%信頼区間:1.36〜1.66倍(倍増期間1.4〜2.3年、年0.13〜0.22桁)
メモリ帯域幅
年1.28倍
倍増期間:2.8年
年0.11桁(OOM)
GPUのメモリ帯域幅は、2008年以降、年28%のペースで増加している。
90%信頼区間:1.24〜1.33倍(倍増期間2.4〜3.2年、年0.09〜0.12桁)
2008〜2025年に発売された147のAIアクセラレータに基づくと、メモリ帯域幅(メモリとプロセッサ間のデータ転送速度)は、演算性能そのものよりも緩やかに伸びている。多くのAIワークロード、特に推論実行では、データを処理する速さよりもデータを移動させる速さがボトルネックになっているため、この差は重要である。
数値フォーマットの普及
3〜4年
過去のサイクルでは、新しい数値フォーマットが広く普及するまでに3〜4年かかった。
FP16とBF16はいずれも、登場から約3年以内にモデル学習での採用率が50%に達し、5年以内に標準となった。どちらの移行でも計算効率は向上したが、それにはハードウェアの対応が前提だった。このパターンが続けば、現在普及し始めているFP8は2028年頃までに標準となり、4ビット学習がそれに続く可能性がある。
1ワットあたりのFLOP/s
年1.34倍
倍増期間:2.4年
年0.13桁(OOM)
GPUのエネルギー効率は、2008年以降、年34%向上している。
90%信頼区間:1.29〜1.39倍(倍増期間2.1〜2.7年、年0.11〜0.14桁)
2008〜2025年に発売された145のAIアクセラレータ全体で、1ワットあたりの演算性能はおよそ2.4年ごとに倍増してきた。電力がフロンティアのデータセンターにとって主要な制約となるなか、エネルギー効率の向上は、一定の電力予算のもとで1つの施設にどれだけの計算資源を詰め込めるかを左右する。