データの解説 AIチップの保有者
よくある質問
原文:AI chip owners documentation – FAQ
所有の数値はどこから来ているのか
AIチップの保有者エクスプローラーは、私たちのAIチップの販売エクスプローラーを土台にしている。こちらは、企業の決算説明、アナリストや業界調査会社の推定、報道に基づいて、主要なAIチップの総販売量と総納入量についての私たちの推定をまとめたものである。
所有者ハブでは、Nvidiaなどのチップベンダーによる開示や決算説明に加え、アナリストの推定や大口購入についての報道を用いて、これらのAIチップを所有者に割り振っている。アナリストや業界調査の結果のうち一般に公開されている一部に大きく依拠しているため、私たちの成果を、有料の業界調査の代わりとして見るべきではない。
詳しくは方法論を参照してほしい。
所有はどのように定義しているのか
このハブの目的は、世界のAI計算資源をどの企業が支配しているかを示すことである。所有の帰属は、法律上・財務上の厳密な基準によらず、おおまかに判断している。これらの企業が所有する資産を財務の観点から把握するために、私たちの数値を使うことは勧めない。
私たちがAI企業やテクノロジー企業に帰属させている計算資源の中には、実際にはデータセンター開発企業や外部の投資家など、ほかの主体と共同で所有されているもの(多くは合弁事業や特別目的事業体を通じて)もありうる。xAIのデータセンターの一部がそうであり、Metaが今後稼働させるHyperionデータセンターもそうなる予定である。共同所有の仕組みのほかにも、AIデータセンターや計算クラスターが、テクノロジー企業の完全所有でありながら借入の担保にもなっている場合がある。
ただし、AIラボなどの企業がクラウド企業の提供する計算資源を使っている場合、その計算資源はラボ自体ではなくクラウド企業に帰属させている。
この取り組みの目的は何か
AI計算資源は、AIの進歩と社会への影響にとって戦略的な意味を持つ。そのため、AI計算資源の動向と、その配分のされ方を推定したいと考えている。主な読者として想定しているのは、ほかの研究者、政策立案者、一般の人々である。このハブは、言及している企業の財務分析のためのツールとして作ったものではない。
「H100eの計算能力」とは何か
H100換算(H100e)の計算能力とは、総計算能力を、それに相当するNvidia H100 GPUの台数で表したものである。各チップが実行できる密な8ビット演算(FP8またはINT8)のピーク値をNvidia H100の仕様値で割り、その比にチップの数を掛ける。たとえば、TPUv7はH100の約2.3倍の演算を実行できるので、100万基のTPUv7の計算能力は230万H100eとなる。8ビット精度に対応していないチップについては、代わりに16ビット(FP16またはBF16)の性能を用いる。
チップの電力はどう測定しているのか
電力の数値は、各チップの熱設計電力(TDP)に基づいている。TDPは、おおまかに言えば、チップが継続的に消費する電力の最大値を指す。重要な点として、AIデータセンターの総消費電力は、サーバー、クラスター、施設の各段階での付帯的な消費があるため、通常は内部のチップのTDPの合計よりもかなり大きい(およそ2倍)。
掲載されている企業以外の「その他(Other)」の所有者とは誰か
AI計算資源の所有について、確定的で網羅的な内訳は把握できていない。少数派ながら無視できない部分を「その他」の顧客に割り当てている。これは、最大手のハイパースケーラーとクラウド企業、フロンティアAI開発企業、中国の顧客のいずれにも当たらない顧客である。
計算資源の重要な所有者には、ほかに次のような区分がある。
- ネオクラウド:一般にAIに特化した、比較的小規模で新しいクラウド事業者である。ハイパースケーラーに次いで最も重要な区分である可能性が高い。最大のネオクラウドはCoreWeaveで、稼働中のデータセンター容量は850 MWある。したがって、2025年末時点ではxAIより大きな計算資源の所有者である可能性が高いが、ハイパースケーラーよりは小さい。主要なAIネオクラウドにはほかにNebius、Nscale、Lambdaがあり、ほかにも少なくとも数十社ある。
- 「ソブリンAI」プロジェクト:米国以外の政府が自国の利益を推し進めるために支援したり後押ししたりする計算資源への投資を指す、Nvidiaの用語である。2025年のNvidiaのAI関連の売上の約15%を占めた。ただし、これらのプロジェクトは主に国家ではなく企業が所有しているようである。つまり、ソブリンAIはネオクラウドやほかの区分と重なっている。
- 一般企業やAI企業:管理のしやすさやデータのプライバシーを高めるためなどの理由で、AIモデルの学習や実行のための計算資源を自ら購入している企業。
- 科学研究機関:米国の国立研究所など。AI・機械学習の研究に加えて、従来型の高性能スーパーコンピューターの用途にも大規模なGPUクラスターを使っている。
OpenAIやAnthropicのようなフロンティアAI企業は、自社のAIチップを所有しているのか
SpaceXに買収される前のxAIは、使用する計算資源の大半を自ら所有する唯一の主要なAI専業開発企業だった。これに対して、OpenAIとAnthropicは、学習や推論実行に使う計算資源の大部分を所有していない。現時点では、両社の計算資源はクラウド企業(計算資源を貸し出す企業)が提供している。OpenAIの場合は主にMicrosoft、Oracle(「Stargate」を含む)、CoreWeaveであり、Anthropicの場合は主にAmazonとGoogleである。Google DeepMindやMetaのAI部門のように、より大きな企業の中にあるフロンティアラボは、おそらく主に親会社が所有する計算資源を使っている。ただし、Metaはクラウドの計算資源を借りる契約を結んでいる。
報道によれば、OpenAIとAnthropicはどちらも将来、自社の計算資源に投資することに関心を持っている。Anthropicは2026年に大量のTPUを購入することを計画している。
「Google」の所有は、Google DeepMindが使える計算資源を表しているのか
そうではない。Google(Alphabetの略称として使っている)が所有する計算資源は、Google DeepMind(Geminiモデルの研究・学習やその他の取り組みを含む)、Google社内のほかの用途、外部の顧客向けのクラウド計算資源に分かれている。同様に、Metaが所有する計算資源も、MetaのフロンティアAIの取り組みだけに使われているわけではない。
なぜGoogle、Microsoft、Amazon、Metaはこれほど多くの計算資源を所有しているのか
世界のAI計算資源の大半は「ハイパースケーラー」が所有している。この語は通常、Google、Microsoft、Amazon、Metaを指し、Oracleを含めることもある。なお、ハイパースケーラーは使用するチップをすべて所有しているわけではない。MetaはGoogleやCoreWeaveとクラウド契約を結んでいる。またMicrosoftは、計算資源の一部をネオクラウドから調達し、それを自社の顧客に貸し出している。
ハイパースケーラーによる計算資源の使い道は、主に三つの大きな区分に分かれる。この三つの区分の大小関係は、私たちにもよくわからない。
一つ目は、AI企業やその他の顧客にクラウドでAI計算資源を貸し出すことである。ハイパースケーラーのクラウド計算資源は、OpenAIやAnthropicなど、AI専業のラボの多くにとって主な計算資源の供給源である。Amazon、Microsoft、Googleはクラウド企業全体の上位3社であり、AIクラウドでもほぼ確実に上位3社である。OracleのAIチップの主な用途も、クラウド計算資源の提供である。一方、Metaにはクラウド部門がない。
二つ目は、モデルの学習、研究、推論実行のために社内のAIラボを動かすことである。最大手のハイパースケーラー4社はいずれも、大規模な基盤モデルに取り組む社内のAI部門を持っている。Google(Google DeepMind)とMeta(MSL/FAIR)の社内ラボは、MicrosoftやAmazonのラボよりもはるかに進んでいるようであり、おそらくはるかに多くの計算資源を使っている。
三つ目は、AI製品や、製品のAIによる機能強化を動かすことである。これはMetaとGoogleの両社にとって大きい。両社は、AI計算資源をコンテンツや広告のレコメンデーションシステムのほか、Google検索のAIによる概要(AI Overviews)のようなAI機能に使っている。今では多くのレコメンデーションのアルゴリズムが、MetaのGEMのような大規模なTransformerモデルで動いている。両社は具体的な数値を開示していないが、これらのAIシステムはGoogleとMetaにとって収益性が非常に高く、計算資源も大量に使っている可能性が高い。両社とも、従来の広告事業の最近の成長をAIの進歩によるものとしている。この区分には、Google検索のAI機能などの製品機能や、その他のさまざまな社内用途も含まれる。1
ハイパースケーラーのクラウドはいずれも、OpenAIやAnthropicなどのモデルやオープンウェイトモデルを使うためのモデルAPIを自ら提供している。
「中国(China)」の区分は何を意味するのか
これは、中華人民共和国に拠点を置く企業に販売されたと私たちが推測するAIチップをまとめた区分である。たとえば、米国の輸出規制に合わせて設計されたNvidiaとAMDのチップ(H800、H20、MI308Xなど)の大部分や、Huawei AscendとCambricon Siyuanのチップがこれに当たる。中国政府が計算資源を所有していることを意味するわけではない。
中国の計算資源についての私たちの推定には、輸出規制対象のチップの密輸は含まれていない。こうした輸入の量がどの程度になりうるかについては、方法論で詳しく論じている。
これらのチップがどの国にあるかはわかるのか
2026年初めの時点で、これはこのプロジェクトの現段階の対象外である。ある国に本社を置く企業が、別の場所にAIデータセンターを建設することもある。米国のハイパースケーラーでは、これはかなりよくあることである。私たちのAIデータセンターハブでは多くの大規模なAIデータセンターの所在地を示しているが、その対象範囲は今のところ、世界のAI計算資源の推定総量のうち一部にとどまる。また、中国企業が所有するチップの大半は、物理的にも中国国内にある可能性が高い(ただし、中国企業は国外のクラウド計算資源を調達することもできる)。
このハブが追跡しているのは、展開済みの計算資源か、納入済みのチップか、それとも発注か
私たちのAIチップの販売の方法論にならい、主要な数値は主に、該当するチップベンダー(Nvidia、AMD、Google TPUの場合はBroadcomなど)が計上した売上に基づいている。ただし、場合によっては(xAIのColossusなど)、稼働中のデータセンターの容量を代理指標として使っている。これらのベンダーが売上を計上するのは、直接の顧客にハードウェアを納入したときである。その顧客は、実際にチップを展開する企業ではなく、サーバーの組立業者である場合もある。したがって、サーバーが組み立てられて最終顧客に納入されるまでには時間差がありうるが、私たちの数値にはそれが反映されていない。さらにこれとは別に、ハードウェアの納入から、チップのクラスターがデータセンターに設置されて稼働するまでにも時間差があり、これには数週間から数か月かかることがある。
その一方で、主要な数値には、Nvidiaなどが抱える売れ残りの在庫は含めていない。在庫の量については、こちらで詳しく論じている。
不確実性と信頼区間はどう測っているのか
チップの所有は、モンテカルロ・モデルを用いて推定している。このモデルには、AIチップの総量と計算能力の両方の不確実性と、NvidiaとAMDについては、それらのチップに占める各社のシェアの不確実性を組み込んでいる。所有者や期間によっては、どれだけのチップを取得したかについて大きな不確実性がある(たとえば、2024年より前のNvidiaに占める大半のハイパースケーラーのシェアや、2025年より前のOracleのシェア)。外挿する場合や、限られた根拠から推定する場合には、シェアのパラメータの不確実性をできるだけ広げるようにしている。主要な数値はこれらのモデルの予測の中央値である。また、モデルからサンプリングし、5パーセンタイルと95パーセンタイルを信頼区間として報告している。詳しくは、方法論と私たちのコードのノートブックを参照してほしい。
信頼区間を比べるときは、不確実性どうしが相関している可能性を考える必要がある。たとえば、中央値の推定ではA社のほうがB社よりNvidiaの計算資源を多く持っているが、両社のNvidiaの信頼区間は重なっている、という場合を考える。これは、B社のほうがA社よりNvidiaの計算資源を多く持っている可能性が十分にある、ということを必ずしも意味しない。信頼区間には、Nvidiaチップの総数と、Nvidiaに占める各社のシェアの両方の不確実性が含まれているので、Nvidiaチップの総量を固定すれば、信頼区間が重ならなくなることもありうる。
ある数値に信頼区間がない場合、それはその数値についての確率モデルがないという意味であり、報告している推定に完全な確信を持っているという意味ではない。
「中国(China)」と「中国(密輸)(China (smuggled))」には何が含まれるのか
「中国」は、正規の経路を通じた中国本土でのAIチップの購入をすべてまとめた所有者の区分である。中国政府を意味するわけではない。ここには、Huawei製のAIチップ(主に中国本土で販売されていると仮定している)のほか、米国の輸出規制のもとで輸出が承認されたNvidiaとAMDのチップや、最初の輸出規制が実施される前の2022年に販売されたチップが含まれる。
「中国(密輸)」は、米国の輸出規制に違反して中国本土に出荷されたNvidiaチップについての私たちの推定である。詳しくは、報告書の全文をこちらで読める。中国に密輸されたチップについての推定を表示するには、グラフの設定で専用の切り替えを有効にする必要がある。
ほかの所有の推定と同様に、これらの数値には、国外のクラウドや中国以外のクラウドを含め、ほかの企業から借りているクラウド計算資源は含まれていない。