レポート
転用と転売:中国への計算資源の密輸量を推定する
原題:Diversion and resale: estimating compute smuggling to China
要点
- 米国の輸出規制に違反して、相当量のAIチップが中国へ送られている。起訴状と調査報道から得られる、転用されたチップや所在不明のチップの証拠は、2025年末までにNvidia H100換算で30万近くに達することを示している。これは、中国が合法的な経路または国内生産で獲得した計算資源のおよそ4分の1に相当する。密輸の多くは発覚しないため、実際の総量はおそらくこれより多い。
- 2025年末までに密輸された計算資源は、90%の確信度で、H100換算29万〜160万と推定される。中央値の66万は世界の計算資源ストックのおよそ3%にあたり、米国の主要AIラボであるxAIが当時保有していた量に匹敵する。推定の上限が正しければ、2025年末の時点で中国のAI計算資源の過半が密輸によるものだったことになる。
- 多くの変数が不確かである。とくに、発覚していない密輸の規模と、転用された、あるいは所在不明とされるチップのうち最終的に中国へ届いた割合が不確かである。
概要
ここ数年、米国は中国に対して計算資源に関わる輸出規制を何度も導入してきた。初期の規制は、半導体製造装置や特定の事業体を対象としていた(たとえば2019年の、HuaweiのBISエンティティリストへの追加)。2022年10月、商務省は一定の特性をもつすべての先端チップに輸出規制を課した。2023年10月には規制を強化して対象を広げ、中国へチップを密輸する動機を強めた。2023年末の新アメリカ安全保障センター(CNAS)の分析は、当時の密輸量は比較的少ないと示唆したが、将来はより大規模な密輸が行われると予想していた。
この予測は当たったようである。2024年のNew York Times、Wall Street Journal、The Informationの調査報道は、禁輸対象のチップが中国へ密輸されている証拠を広範に見いだした。2025年4月、商務省はH20チップに追加のライセンス要件を課した。H20は、Nvidiaが従来の輸出規制に適合させるために開発し、中国で人気のあったチップである。1これにより輸出はさらに制限され、密輸の動機が強まった。The Financial Timesは、4月から7月までに10億ドルを超えるAIチップが密輸されたと報じた。2
クラウド企業による大規模な転用の証拠も積み重なっている。司法省はSupermicroの従業員数名を起訴し、同社の幹部1名を逮捕した。従業員らは、25億ドル相当のNvidiaチップを中継役の事業体へ転用し、その事業体がサーバーを中国へ回していたとされる。Bloombergの調査報道は、シンガポールのクラウド事業者Megaspeedのマレーシアのデータセンターにあるチップが、同社がNvidiaから輸入した数より数万個少ないことをほのめかしている。また同社のCEOは、中国との密接な関係を理由に調査の対象となっている。
私たちは、起訴状と調査報道から得た証拠をもとに、モンテカルロ・シミュレーション3で中国へ密輸された計算資源の総量を推定する。証拠は2種類に分ける。転用の証拠は、チップが正規のサプライチェーンを離れて密輸業者の手に渡る経緯をたどるものである。転売の証拠は、中国国内の密輸チップ市場、つまり販売業者や仲介業者の数と、その取引量に注目するものである。同じ一群のチップについて、転用と転売の両方を扱う情報源もある。

密輸に成功したチップはどれも、転用と転売の両方を経ているはずなので4、同じ量について、理論上はおおむね一致するはずの推定を二通り並行して立てられる。転用と転売から得られた分布は同一ではないが、かなりの部分が重なっている。
転用の推定は、2024年と2025年の疑惑のデータベースを作り、虚偽や誇張のある疑惑と、報道や取り締まりで見落とされた事例を補正して作る5。転用が試みられたものの失敗したと分かっている事例は、データベースに含めていない。転売の推定は、販売業者の数と個々の取引の規模に関する調査報道を集計して、密輸された計算資源の市場の総取引量を見積もる。転売の推定には、Grunewald と Fist による2024年のCNASの推定の一部を用いている。
転用された、あるいは所在不明とされるチップの疑惑は、2025年末までの累計で30万H100e近く6に達する。これは、中国が合法的に輸入または国内生産したと推定される計算資源の4分の1にあたる。この数字は、実際の密輸量の上限でも下限でもない。この数字が実際の密輸を過大に見積もっているかもしれない主な理由は二つある。疑惑の大半はまだ法廷で立証されていないこと、そして中国へ回されたチップの一部は実際には届いていないかもしれないことである。逆に、30万という推定は公に疑惑が持ち上がった事例しか捉えていない。密輸の一部、おそらくは大半は、記者にも当局にも発覚していない。したがって、中国へ密輸された計算資源の実際の総量が30万を上回ることは、ほぼ確実だと考える。詳細と、報道された密輸・疑惑のある密輸の累計の概要は後述する。
私たちのモデルは、2025年末までに密輸された計算資源を累計66万(90%信頼区間:29万〜160万)H100eと推定する。これはCNASやChinaTalkによるものを含む他の推定よりやや多いが、中央値は相手の信頼区間に十分収まっており、その逆も同様である。これらの推定との比較と、相違点の検討は後述する。モデルと推定の詳細も後述する。私たちの推定が対象とするのは、物理的に中国へ持ち込まれたチップとサーバーの量である。中国国外にあって中国の顧客が利用するクラウドの計算資源は対象外である。こうした形態は、最終用途の制限と制裁リストの照合を条件として、現行の米国の輸出規制ではおおむね認められている。これらの推定を世界全体の文脈で見るには、EpochのAI Chip Ownership Hubを参照してほしい。
密輸チップの証拠
計算資源の転用
チップが中国国外から中国へ持ち込まれたことを示す証拠は、主に、転用の疑惑をめぐる公開の起訴状と報道機関の調査に基づく。ただし、調査報道のなかには中国国内での転売の証拠となるものもある。
主に転用にあたる事例を、次の表に示す。転用と中国国内での転売の両方にわたる事例は、両方の表に載せている。
| 疑惑の対象 | 種類 | チップ数 | H100e | OEM7価格(ドル)(転売価格) | チップのモデル |
|---|---|---|---|---|---|
| Supermicro | 転用 | 約8万 | 約14.1万 | 25億 | 50%がB200 |
| Megaspeed8 | 転用 | 5万9 | 約11.1万 | 約17億 | 80%がB200 |
| Hao Global | 転用 | 177610 | 1776 | H100 | |
| Janford Realtor の事件 | 転用 | 400 | 126 | A100 | |
| ALX solutions | 転用 | 約1600 | 約1600 | H100 | |
| Li Ming | 転用 | 約5600 | 約5600 | 1.4億 | H100 |
| Aperia | 転用 | 約10000 | 約10000 | 2.5億 | H100 |
| 深圳の商人 | 両方 | 60 | 19 | A100 | |
| 大学生 | 両方 | 6 | 1.9 | A100 | |
| Leslie Zhou | 両方 | 約2000 | 約2000 | 約5000万→(1.03億) | |
| William11 | 両方 | 2400 | 2400 | (1.2億) | |
| Mike | 両方 | 4800 | 4800 | 1.8億→(2.3億) | |
| 合計 | 約15.7万 | 約28.2万 |
計算資源の転売
以下は最終利用者に基づくものではなく、中国国内のチップ市場から得た証拠に基づく。証拠は、取材、販売契約の確認、中国国内に実在する密輸チップの写真などを含む調査報道から得ている。
同じチップの一部が、転用の側と転売の側の両方で観測されている可能性も高い。12
中国のチップ密輸に関する報道機関の調査のなかには、運ばれた総量を数え上げようとはせず、流通網の特定の側面を詳しく論じるものもある。2024年7月のWSJの調査は、オンラインマーケットで活動する販売業者が70を超える(うち25と話をした)と報じたが、総量についてはあいまいだった(ただし、多くの売り手が数十個のチップを持っていたと記している)。2024年8月のNYTの記事も、同程度の数の販売業者を見つけたと報じ(チップを販売するとうたう店舗が100近くあり、記者はそのうち11と話をした)、注文量についてもう少し詳しく伝えた。ある業者は企業から一度に200〜300個の注文を受けると語り、別の業者は2,000個の注文を1件受けたと述べている。各記事で明示的に数え上げられたチップの総数は少ないが、報道全体から推し量れるのは、総じて相当量のチップが売られており、その多くが小規模に取引されているということである。
FTの記事と同じく、販売業者が仕入れる供給のうち、どれだけが大規模な事業に由来し、どれだけが記事に描かれた小規模な密輸網に由来するのかは、ある程度不確かである。この点はモデルによる推定の節でさらに論じる。ここではまず、明示的に報じられた事例を集計する。
転売市場について得られるデータの多くは、個々の事例を具体的に数え上げたものではなく、市場の販売業者の数と、各業者が扱う取引量の幅を示すものである。
| 疑惑 | 種類 | チップ数 | H100e | OEM価格(ドル)(転売価格) | 構成 |
|---|---|---|---|---|---|
| Leslie Zhou | 転用+転売 | 約2000 | 約2000 | 約5000万(1.03億) | |
| 大学生 | 転用+転売 | 6 | 1.9 | A100 | |
| 深圳の商人 | 転用+転売 | 60 | 19 | A100 | |
| William | 転用+転売 | 2400 | 2400 | (1.2億) | |
| Mike | 転用+転売 | 4800 | 4800 | 1.8億(2.3億) | |
| H20禁輸中に10億ドル超(FT、2025年7月) | 転売 | 約2.4万 | 約4.4万 | (10億) | 55%がB20013 |
| Gate of the Era(FT、2025年7月)(注:上の合計の内数) | 転売 | (4億) | |||
| 「70を超える販売業者……うち25と直接接触」(WSJ、2024年7月) | 転売 | - | - | - | |
| 多数の売り手が、それぞれ毎月数十個のチップ(WSJ、2024年7月) | 転売 | - | - | - | |
| 複数の業者が……数百個から数千個の取引に言及(NYT、2024年8月) | 転売 | - | - | - | |
| 企業が一度に200個か300個を注文(匿名の業者)(NYT、2024年8月) | 転売 | - | - | - |
推定の方法
観測された証拠から中国へ密輸された計算資源の総量を推定するには、モデルの両側で、関連するいくつかのパラメータを推し量る必要がある。
計算資源の転用
ここでの主な不確実性は次のとおりである。
- 転用された計算資源のうち、どれだけの割合が発覚しているか。
- 密輸された計算資源のうち、どれだけの割合が捜査を招かずに済んだのかは分からない。
- まだ公表されていない、あるいは起訴に至っていない捜査が進行中かもしれない14。
- 転用されたとされる計算資源のうち、どれだけの割合が中国に届いたか。
- 転用が試みられたからといって、成功したとは限らない。
- 多くの事例はまだ法廷で立証されていないので、疑惑が誤っている可能性もある。
転用の側で最大の不確実性の源は、転用のうちどれだけが観測されているのかが分からないことである。これまでに発覚し報じられた大規模な密輸計画が総量の大半を占めているのかもしれないし、全体の流れのほんの一部にすぎないのかもしれない。私たちは発覚率に広い幅を想定している(90%信頼区間:10〜80%、中央値25%15)。これは他の一部の不正な流れより高い。犯人の特定に成功すれば、それ以前の流れについて多くの情報が得られることがあるからである。発覚させるほうが、途中で差し止めるより容易である。常習犯がいったん捕まれば、過去の取引も明らかになる。
発覚に関する不確実性に加えて、疑惑そのものにもある程度の不確実性がある。起訴状が公開された後でさえ、どの種類のチップがいつ、何個運ばれたのかについて、明確な情報があるとは限らない。これまでで最大の起訴では、Supermicroからダミー会社へ25億ドル分のチップが送られ、そのダミー会社がチップを中国へ転送していたと司法省は主張している。起訴状が明示的に中国に届いたと主張しているのは5.1億ドル相当のサーバー(2025年4月〜5月)だけだが、起訴状の他の記述からは、司法省が少なくとも半分のチップは中国に届いたとみていることがうかがえる16。起訴状からはまた、この計画が時とともに拡大し、Blackwellが入手可能になると(2026年)Blackwellの出荷へ積極的に切り替えたとされていることも分かる。そこで私たちは、事例ごとの不確実性17と、報道の正確さについて全体にかける小幅の割り引きの両方を組み込んでいる。
計算資源の転売
転売の推定を左右する不確実性は二つある。観測された販売業者のデータが市場の総取引量について何を示しているか、そして密輸された計算資源のうち、調査報道の記者が把握できる転売業者を経由するものがどれだけの割合か、である。それぞれ順に扱う。
市場の総取引量を推定するにあたっては、CNASにならって販売業者の数に業者あたりの取引量を掛ける。ただし、平均的な業者の取引量を1回だけ抽出する代わりに、業者が市場全体のショックを共有しつつ個別のばらつきも持つ階層モデルを加えている18。
販売業者の数は対数正規分布とし、90%信頼区間を2024年は[38, 150](CNASにならう)、2025年はより広い[20, 200]とした。2025年には販売業者の数に触れた報道が少なく、市場が拡大したのか縮小したのかが不確かだからである。業者あたりの取引量は、CNASにならい、おおむね95%信頼区間を年[204, 12,000]チップとした。H20禁輸期間(2025年4月〜7月)には、Gate of the Era規模の事業を取り込むため、99パーセンタイルとして年4万チップという引き上げた上限を用いる。FTの報道によれば、Gate of the Eraはこの期間に4億ドル近くのチップを動かしていた。
禁輸の四半期について業者あたりの上限を引き上げるため、2025年を禁輸前・禁輸中・禁輸後の小期間に分けている。そのため、三つの小期間すべてに共通の対数正規分布の年ショック(sigma=0.5)を適用する。この相関が必要なのは、小期間ごとに独立に抽出した値を合計すると、2024年の年1回の抽出に比べて2025年の分布が人為的に狭くなるからである。このショックは、2025年の対数スケールでの広がりが2024年と一致するように較正している。
上の販売業者の数と業者ごとの取引量の推定は、中国のグレーマーケットの売り手と取引に関する調査報道に基づいている。この市場の販売業者や仲介業者を経由せず、最終利用者が自ら輸入を手配するチップもおそらくある。グレーマーケットの売り手はある程度観測できる。売り手も客を見つけたいからである。一方、完全に内部で完結する計画について記者が情報を得るのは難しい。とはいえ、グレーマーケットが盛況であること(輸出規制対象のチップを販売することは中国国内では違法ではない)、そして転用の側でこれまでに知られている事例がすべて仲介者を経由していたことから、チップの大半(90%信頼区間57〜96%、中央値82%)はこうした仲介者を経由すると考える。それに応じて、転売の推定を引き上げている19。
統合した結果
転用の側も転売の側も、同じ量、つまり中国に届いた密輸計算資源の総量を推定しようとするものである。転用は輸出側(正規の経路から何が流れ出ているか)から、転売は中国側(グレーマーケットに何が現れているか)からこの量に迫る。私たちは両者を加重して混ぜ合わせ、転用の推定(具体的な数量を記した起訴状に基づく、事例単位の手がかりが多い)に大きな重みを置いて統合する。
転用の側からは累計の中央値が約53万H100e(90%信頼区間:18万〜160万)、転売の側からは約70万(90%信頼区間:23万〜230万)が得られる。転売の側が高めに出るのは、市場モデルの分布の右裾が厚いためである(不確かな業者数と不確かな業者あたりの取引量の積が重なって、幅の広い分布になる)。統合した推定は約66万H100e(90%信頼区間:29万〜160万)である。
なお、統合した分布は転用と転売の抽出値を平均して得ている。どちらも平均が中央値より大きい、似た右に歪んだ分布なので、抽出値を平均すると統合後の中央値は押し上げられる(そして信頼区間は狭まる)。
他の推定との比較
こうした推定を公に試みたものは主に二つある。新アメリカ安全保障センター(CNAS)の Grunewald と Fist は、2024年に中国へ密輸されたチップを14万個と推定した(コード)。この点推定には大きな不確実性がある(90%信頼区間は2万〜80万個)。私たちのモデルのうち計算資源の転売を扱う部分は、二人のモデル化から強い影響を受けている。
2025年4月、ChinaTalkのアナリスト Aqib Zakaria は、輸出規制をかいくぐって中国へ密輸された計算資源を累計45.2万H100e(90%信頼区間:19.4万〜130万H100e)と推定した(コード)。この推定は、CNASの2024年の数字をもとに2025年の量を予測したものである。この推定は、前述のCNASによる2024年の密輸推定を出発点として、2025年の密輸推定を作っている。
私たちの推定はこれらとかなり近く、チップ数ではとくに近い。H100eの推定では差が大きくなる。2024年については、CNASと比べて、密輸されたチップのうちA100ではなくH100/H200が占める割合を高く見積もった(Hopper世代が約67%ではなく約83%)。2025年については、ChinaTalkと比べて、H100ではなくB200/B300が占める割合を高く見積もり、この年はおおよそ半々とした。相当量のBlackwellが中国に届いていることを示す証拠は、転用の側にも転売の側にもある。H20禁輸中の密輸を扱ったFinancial Timesの調査は、Blackwellを最も需要が高く、最も広く出回っているチップのモデルだと述べている。Supermicroの起訴状は4月からB200の転用があったことを裏づけており、所在不明とされるMegaspeedのチップも大半がBlackwellであるようだ。
| チップ数 | CNAS | ChinaTalk | Epoch |
|---|---|---|---|
| 2024 | 13.6万[1.7万〜77.2万] | — | 16.9万[6.6万〜44万] |
| 2025 | — | 21.6万[12.3万〜38.8万] | 28万[11万〜75.1万] |
| 累計 | — | 37.8万[19.1万〜101.2万]20 | 46.6万[21.1万〜108.6万] |
| H100e | CNAS | ChinaTalk | Epoch |
|---|---|---|---|
| 2024 | 10.3万[1.3万〜59.9万] | — | 15.9万[6.4万〜41.9万] |
| 2025 | — | 31.2万[17.6万〜56.5万] | 48万[18.9万〜128.9万] |
| 累計 | — | 45.2万[19.4万〜130万] | 66.3万[29.4万〜159.3万] |
四半期ごとの外挿
2024年と2025年に密輸された計算資源について、四半期ごとの推定も作成した。
2024年については、年間の推定を、1四半期遅らせたH100の生産量に応じて各四半期に配分する。これにより、チップの供給が増えて売り手が市場に参入するにつれ、年間を通じて販売業者が増えていくという予想を反映できる。その結果、第1〜第4四半期の重みはおよそ[0.18, 0.23, 0.27, 0.33]となる。2025年については、転売モデルで用いた禁輸前・禁輸中・禁輸後の構造に基づいて配分する。
私たちの中心的な推定では、2025年末までにおよそ66万H100換算の計算資源が中国へ密輸されたが、不確実性は大きい(90%信頼区間:29万〜160万)。下限側であれば、密輸は意味のある、しかし副次的な経路であり、輸出規制に違反して動いたチップの大半は、すでに起訴か、少なくとも捜査につながっていることになる。上限側であれば、中国国内のAI計算資源の供給源として、密輸が合法的な経路を上回ることになる。
この幅を大きく左右するのは、表に出ない密輸がどれだけあるかである。発覚率が10%か80%かで総量は大きく変わり、手元の証拠ではそのどちらかを確信をもって選ぶことができない。中国国内でグレーマーケットが盛況だという証拠は信頼区間を狭めるのに役立つが、それでも区間は広いままである。
今後どうなるかは分からない。密輸は2024年から2025年にかけて増えたが、それは部分的には、チップを密輸する動機を強めた輸出規制の変更によるものだった。書類の上では輸出規制は再び緩和されたが、合法的に出荷されるチップへの影響ははっきりしない。最近、いくつかの大規模な密輸事業が摘発されたことも、転用の流れの減少につながるかもしれない。
謝辞有益なフィードバックをくださった Amelia Michael、Aqib Zakaria、Erich Grunewald、Cheryl Wu、Konstantin Pilz、Tim Fist に感謝する。
注
-
中国は、H20が2024年に投入されてから禁輸されるまでに、180億ドル近く、H100換算でおよそ22万相当のH20を輸入していた。 ↩
-
H20の制限は2025年7月に米国によって解除されたが、その後、中国がH20の輸入を制限した。制限が当初解除されたことでグレーマーケットのチップの需要は減ったように見えたが、H20の販売が再開されなかったときにグレーマーケットの販売が持ち直したのかどうかは分からない。 ↩
-
不確かな入力それぞれについてランダムな値の抽出を繰り返し、起こりうる結果の分布を組み立てるシミュレーション。 ↩
-
最終利用者が、通常はペーパーカンパニーなどの中継役の事業体を通じて、チップの転用を直接手配している場合もある。その場合は、中継役の事業体から最終利用者へのチップの移転を転売の段階とみなす。最終利用者がより直接的にチップを密輸するケースもありうるが、全体の流れに占める割合は小さいと見込んでいる。 ↩
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報道の正確さは中央値80%、90%信頼区間(61〜94%)とし、発覚率は10〜60%(90%信頼区間)、中央値24.5%と仮定している。報道全体に対する割り引きに加えて、事例ごとに、所在不明とされるチップや転用が試みられたチップが中国に届いたかどうかについての個別の不確実性がある。 ↩
-
計算能力を、密な8ビット演算の毎秒演算回数に基づいて、同等のNvidia H100の台数で表したもの。 ↩
-
OEM価格とは相手先ブランド製造業者(OEM)の価格である。転売価格は1.5〜2倍高いことがあり、情報源に記載がある場合は括弧内に示している。 ↩
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Megaspeedと、Supermicroの起訴状にあるCompany-1は、別の会社であるようだ。報道によれば、Megaspeedの仕入れ先はAivresと、直接のNvidiaである。 ↩
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「2023年の設立から今年11月までに、Megaspeedは少なくとも46億ドル相当のNvidia製ハードウェアを輸入しており、そこには少なくとも13万6,000個のNvidiaのグラフィックス処理装置(GPU)が含まれていた」……「各拠点で、NvidiaはMegaspeedが所有するサーバーとラックを、およそ8万6,000個のGPUに相当すると記録した」 ↩
-
司法取引によれば、中国に届いたとみられる。 ↩
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「William と名乗る仲介業者が中国の家電メーカー向けに1億2,000万ドルの注文を手配していたとき、その注文はあまりに大きかったため、Nvidiaの担当者による現地検査が義務づけられた。高価な機器がきちんと設置されているかを確認するためである」 ↩
-
たとえば、Financial TimesがH20禁輸期間の密輸に関する2025年半ばの報道で観測した密輸チップのうち、どれだけが、その後のSupermicro従業員の起訴状の総数に含まれるチップと重なっていたのかははっきりしない。FTの記事では、Supermicroは闇市場で人気のある製品の組み立てメーカーとして繰り返し言及されていた。とくに、4億ドルの売上があったとされる大規模な転売業者 Gate of the Era についてそうである。しかし記事は、Dell製品やAsus製品にも触れており、その割合までは示していない。10億ドル分のサーバーのうちSupermicro製の割合が分かったとしても、そのうちどれだけが、起訴状で言及された特定のペーパーカンパニーを通じて被告らが密輸したサーバーで、どれだけが小規模な転売業者によって独自に密輸されたもの(その例は他の報道機関の調査で記録されている)なのかは、やはり確かめようがない。 ↩
-
「NvidiaのB200は、最も需要が高く、しかも最も広く出回っているものになった」 ↩
-
たとえば、BISがSupermicroから「Company-1」への出荷を差し止めてから、起訴によってこれらの疑惑が公になるまでには長い間隔があった。 ↩
-
この推定は、脱税(発覚率25%)と企業不正(33%)の証拠に影響を受けている。金融不正の要素があるため、麻薬密輸よりもこれらのほうが類例として適している。 ↩
-
「Company-1には、米国メーカーから購入していた大量のサーバーを保管・使用する能力がなく、被告らの指示で発注したサーバーの大半は、被告らと緊密に連携する第三者の仲介業者のネットワークを通じて中国へ転用された」(出典) ↩
-
たとえば、起訴状は調査報道より強い証拠なので、Supermicroについては12.5億〜25億ドル相当のサーバーが中国へ転用されたとモデル化する一方、Megaspeedについては0〜5万個のチップ(大半がBlackwell)が中国へ転用されたとモデル化している。 ↩
-
これは、観測された業者の年間取引量の分布から単一の「平均取引量」を抽出する方法(非現実的に広い区間になる)と、業者ごとに独立に抽出する方法(非現実的に狭い区間になる)の中間にあたる。これらのモデル化の選択肢では、いずれも平均取引量は同じである。 ↩
-
この分類では、企業が内部で組織したチップの調達も転売に数える。中国企業はチップを購入するためにペーパーカンパニーを設立し、それを親会社に「売り」戻す必要があるからである。 ↩
-
CNASの2024年の数字とChinaTalkの2025年の数字を、私たちが合計してみたもの。 ↩