データの解説 AIチップの部品
方法論
原文:AI chip components documentation – Methodology
EpochのAIチップの部品データセットは、世界の先端半導体製造能力のうち、主要なAIアクセラレータ設計企業が消費した割合を、2024年第1四半期から2025年第4四半期まで四半期ごとに推定したものである。対象の設計企業はNVIDIA、AMD、Google、Amazonである。
この方法論では、「Google」と「Amazon」はそれぞれ、Google TPUとAWS Trainiumチップに関わる部品の消費を指す。これは最終顧客を基準にした帰属である。BroadcomはGoogleの長年のTPU向けASICパートナーであり、AWS TrainiumはAWSのAnnapurna Labsが、MarvellやAlchipなど外部のASICパートナーの支援を受けて開発している。それでも関連するロジック、HBM、CoWoSの需要をGoogleとAmazonに帰属させるのは、両社が設計者であり、これらのチップが両社のAIインフラのために作られ、そこで展開されているからである。
対象とするのは、サプライチェーンの次の三つの部品である。
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先端ノードのロジックウェハー:TSMCで製造される3〜5 nmのウェハー(N3/N3E/N3P および N5/4N/4NP ノード)。AIアクセラレータの内部にあるシリコンダイになる。
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CoWoSアドバンスト・パッケージングのウェハー:CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)パッケージングは、複数のチップレットと広帯域メモリのスタックを一つの基板上に一体化するのに使われる。
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広帯域メモリ(HBM):アクセラレータのパッケージ内でロジックダイの隣に置かれる専用のDRAMスタック。アクセラレータの計算コアにデータを高速に送り込む。
対象とするのは、チップのパッケージに使われる主要な半導体部品であり、チップを展開するのに必要なより広いインフラは含まない。特に、サーバー、光学部品、冷却システム、電源といった、ラック単位、ネットワーク、データセンターの機器は推定の対象外である。
完成したAIチップが販売されるのは、通常、主要な投入物が製造、パッケージング、搭載されてから数週間から数か月後である。たとえば、第2四半期に販売されたチップに使われたロジックウェハー、CoWoSの生産能力、HBMは、第1四半期に消費されていたかもしれない。そこで、チップの需要を利用可能な部品の供給と比べるため、各チップの部品の需要を、完成したチップが販売された四半期ではなく、投入物が使われたとみられる四半期に割り当てる。
推定モデルは三つの段階で進む。第一に、AIチップの販売データセットを用いて、設計企業別・チップ種類別の四半期ごとのチップ生産量を推定し、製造の時間差、在庫の積み増し、輸出規制により行き場を失った在庫(評価損)を調整する。第二に、チップごとの仕様と歩留まりの仮定を用いて、そのチップ数量をロジックウェハー、CoWoSウェハー、HBMの需要に換算する。第三に、各設計企業の部品需要を、四半期ごとの部品の総供給量についての私たちの推定と比べる。
これにより、部品の消費量の絶対値と、世界全体の供給に占める各設計企業のシェアの両方を推定できる。
方法論の概要
モデルには二つの側面がある。一つ目は部品の需要である。各四半期に各種類のチップがどれだけ生産されたかを推定し、さらに各チップがロジックウェハーの生産能力、CoWoSパッケージングの生産能力、HBMをどれだけ必要としたかを推定する。これには、チップ出荷量の推定、製造の時間差の仮定、在庫の調整、チップごとの部品表(BOM)のパラメータが必要になる。
二つ目は部品の供給である。各部品の世界全体での四半期ごとの総供給量を推定する。ロジックウェハーについては、TSMCのノード別のウェハー売上から逆算する。CoWoSについては、月産ウェハー数で報告されている生産能力の基準値から補間する。HBMについては、供給企業の開示、HBMの市場シェアの推定、年間の市場規模の基準値から、四半期ごとの市場の推定を組み立てる。
そのうえで、部品の需要を部品の供給で割って、供給に占めるシェアを計算する。
分析は次の段階で進む。
- 各部品の四半期ごとの総供給量を推定する。
- 各部品の四半期ごとの消費量を推定する。
- Epoch AIのチップ販売データセットから、四半期ごとのAIチップの個数を取り出す。
- 部品ごとの製造の時間差を当てはめ、各出荷四半期の需要を消費四半期に振り分け直す。
- NVIDIAとAMDの貸借対照表上の在庫の変化に応じて個数を調整し、製造済みだがまだ売上に計上されていないチップを捉える。
- チップごとの仕様を用いて、個数をロジックウェハー、CoWoSウェハー、HBMの消費量に換算する。
1. チップ部品の総供給量の推定
サプライチェーンの各部品について、世界全体での四半期ごとの総生産量を推定する。推定の方法は部品ごとに異なる。
ロジックウェハーの供給
世界の先端ノードのロジックウェハーの供給量は、TSMCのノード別の四半期ウェハー売上から逆算して推定する。ノード別のウェハー売上(3 nmと5 nm)はTSMCの四半期決算の開示から直接取っており、この入力シートで確認できる。推定値は、先端ノードのロジック製造で標準的なウェハーサイズである12インチウェハーについてのものである。12インチウェハー1枚は、ダイサイズと歩留まりに応じて、のちに数十個の使えるAIアクセラレータのダイに切り分けられる。
四半期のウェハー売上をウェハー枚数に換算するには、売上を各ノードのウェハー1枚あたりの推定価格で割る。価格の範囲は次のとおりである。
| ノード | P5 | 中央値 | P95 |
|---|---|---|---|
| 3 nm | $17,000 | $20,000 | $22,000 |
| 4 nm | $16,000 | $18,500 | $20,000 |
| 5 nm | $16,000 | $17,500 | $19,000 |
TSMCのウェハー枚数を推定したあと、それを世界の先端ノードの生産能力に占めるTSMCの推定シェアで割り、世界全体の供給量に拡大する。アナリストはしばしば、世界の先端ノードの生産能力の約90%をTSMCが占めると推定しているが、この数値には7 nmの生産能力が含まれている可能性がある。私たちのモデルは5 nm以下を対象としているため、関係する生産能力に占めるTSMCのシェアはやや異なるかもしれない。そこで、世界の5 nm以下のロジックウェハー生産能力に占めるTSMCのシェアを幅を持たせてモデル化し、低位・中央・高位のケースでそれぞれ85%・90%・95%を用いる。
| 四半期 | TSMCの3nmウェハー売上 | TSMCの5nmウェハー売上 | TSMCの3nmウェハー(千枚) | TSMCの5nmウェハー(千枚) | 世界の3nmウェハーの推定(千枚) | 世界の5nmウェハーの推定(千枚) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年第1四半期 | $1.45B | $6.07B | 72 | 347 | 80 | 386 |
| 2024年第2四半期 | $2.79B | $6.48B | 139 | 370 | 155 | 411 |
| 2024年第3四半期 | $4.02B | $6.35B | 201 | 363 | 223 | 403 |
| 2024年第4四半期 | $6.01B | $7.92B | 300 | 453 | 334 | 503 |
| 2025年第1四半期 | $4.87B | $7.74B | 244 | 442 | 271 | 491 |
| 2025年第2四半期 | $6.03B | $9.33B | 302 | 533 | 335 | 592 |
| 2025年第3四半期 | $6.64B | $10.81B | 332 | 617 | 369 | 686 |
| 2025年第4四半期 | $8.01B | $10.08B | 400 | 576 | 445 | 640 |
3 nmと5 nmのノードに絞っているのは、追跡している設計企業4社の主要なAIアクセラレータがいずれも3 nmか5 nmのロジックダイを使っているからである。TSMCの「4nm」の区分として販売されているアクセラレータ(たとえばB200やB300)はN5ファミリーに属し、私たちのモデルではN5ファミリーのウェハー価格で計算している。
検証のために比べると、SemiAnalysisは、2025年第1〜第4四半期のTSMCの3 nmウェハー出荷量をそれぞれ約21万5,000枚、28万5,000枚、30万枚、38万5,000枚と推定している。これらの数値は、売上に基づく私たちの推定とおおむね整合しているが、どの四半期でもやや低い。私たちの中央値の推定では、同じ期間のTSMCの3 nmウェハーは24万4,000枚、30万2,000枚、33万2,000枚、40万枚となり、第1四半期で約13%、第2四半期で6%、第3四半期で11%、第4四半期で4%多い。
この食い違いの理由の一つとして、3 nmウェハーの平均販売価格(ASP)をどの四半期でも同じ値に固定していることが考えられる。実際には、N3の派生ノードや顧客の構成が変わるにつれて、TSMCの3 nmの加重平均のASPは時期によって変動している可能性が高い。顧客によっても、製品の複雑さ、数量の確約、契約条件、立ち上げ初期のノードと成熟したノードのどちらの生産能力を買うかによって、ウェハー価格は異なりうる。ある四半期の実際の3 nmの加重平均ASPが、固定した中央値の仮定(2万ドル)より高ければ、売上に基づく私たちの方法では、その四半期のウェハー枚数を過大に推定することになる。
全体として、私たちの推定はSemiAnalysisの推定とおおむね同じ水準にある。
CoWoSパッケージングの供給
CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)は、ほぼすべての高性能AIアクセラレータに使われているTSMCのアドバンスト・パッケージング技術である。CoWoSの生産能力は、公開されている業界レポートから、月産ウェハー数(WPM)で推定する。
TSMCはパッケージングの生産能力の数値を直接開示していないため、業界アナリストが報告する年末時点の基準値に頼っている。用いる基準点は次のとおりである。
| 年末 | WPM(低位) | WPM(高位) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2023年末 | 13,000 | 16,000 | SemiWiki |
| 2024年末 | 35,000 | 40,000 | SemiWiki |
| 2025年末 | 65,000 | 75,000 | SemiWiki, TrendForce |
| 2026年末 | 90,000 | 110,000 | SemiWiki, DigiTimes |
これらの基準値は年末時点の生産能力を切り取ったものであり、年間の平均ではない。年末の基準点の間を線形補間して月ごとのWPMの推移を組み立て、各暦四半期内の月の値を合計して四半期の生産能力を求める。この方法では、TSMCのCoWoSの生産能力が期間中なめらかに拡大したと仮定している。
HBMの供給
HBMの供給量は、HBMの市場規模全体について公表されている推定を基準にする。Micronは、HBMの獲得可能な市場全体が2024年に約180億ドル、2025年に約350億ドルだったと述べている。Goldman Sachsは2025年のHBM市場を360億ドルと推定しており、Micronの数値を裏づけている。
これらの市場規模の推定に合わせるため、HBMの供給量は米ドルで測る。HBMの価格はHBM2e、HBM3、HBM3eといった世代によって異なるため、消費された物理的なGBを金額に換算する際には、アナリストの推定から取った世代別の価格の仮定を用いる。
四半期ごとのHBMの供給量を推定する際には、年間の市場総額を単純に四半期で均等に割ることはしない。HBM市場は四半期ごとになめらかに成長したわけではないからである。供給と売上は、製品の急速な立ち上げ、HBM3Eの認定時期の変化、顧客による前倒し、一時的な出荷の変動の影響を受けた。2025年第1四半期にはHBMの出荷量が減少したとも報じられている。
そこで代わりに、メーカーの開示と市場シェアの推定を用いて四半期ごとの推定を組み立てる。具体的には、主要なHBM供給企業(主にSK HynixとMicron)について報告された、または推定したHBM売上を、世界のHBM市場に占める各供給企業のシェアについてのCounterpoint Researchの推定と組み合わせる。ある四半期の世界のHBMの市場規模全体は、次のように推定する。
世界のHBM市場 = 企業のHBM売上 ÷ 企業のHBM市場シェア
SK Hynixについては、四半期のDRAM売上と、DRAM売上に占めるHBMの割合についての同社の開示から、HBM売上を推定する。たとえばSK Hynixは、HBMが2024年第3四半期にはDRAM売上の約30%、2024年第4四半期には40%だったと述べている。これらの開示をSK HynixのDRAM売上とCounterpointによるHBM市場シェアの推定と組み合わせて、四半期ごとのHBMの市場規模全体を推定する。
Micronについては、HBM売上の開示がある場合はそれを直接の基準として用いる。たとえばMicronは、HBM売上が2025会計年度第2四半期に10億ドルを超え、2025会計年度第3四半期には前四半期比で50%近く増え、2025会計年度第4四半期には20億ドル近くに達したと述べている。これらの開示を用いてMicronの四半期のHBM売上を推定し、CounterpointによるMicronのHBM市場シェアの推定を用いて市場全体に拡大する。
そのうえで、四半期ごとに、企業別の推定のうち最も情報量の多いものを選ぶ。さらに、これらの企業ごとの推定を年間の市場規模の推定と照らし合わせ、四半期ごとの推移が、報告されている2024年の180億ドル、2025年の350億ドルという世界のHBM市場と整合することを確かめる。
この方法により、なめらかな線形の傾向を当てはめるのではなく、市場の実際の拡大を反映した四半期ごとのHBM供給の推移が得られる。
| 四半期 | 世界のHBM市場の推定 |
|---|---|
| 2024年第1四半期 | $2.5B |
| 2024年第2四半期 | $3.5B |
| 2024年第3四半期 | $4.9B |
| 2024年第4四半期 | $7.5B |
| 2025年第1四半期 | $6.5B |
| 2025年第2四半期 | $7.9B |
| 2025年第3四半期 | $9.5B |
| 2025年第4四半期 | $11.2B |
HBM供給企業はHBM単独の売上を一貫して報告しているわけではなく、市場シェアの推定もアナリストによって異なるため、これらの四半期ごとの推定には無視できない不確実性がある。また、Counterpointの四半期ごとの市場シェアの推定に大きく依存しており、その推定自体が不正確だったり不確実だったりする可能性もある。どの四半期の推定よりも、公表されている市場規模の基準値に近い年間の合計のほうを信頼している。それでも、この方法は、年間の市場規模を単純に四半期で均等に割るよりも、HBMの拡大について現実的な四半期ごとの推移を示す。
2. 四半期ごとの消費量の推定
あるチップ設計企業がある四半期にサプライチェーンの各部品をどれだけ消費したかを推定するには、二つの入力が必要である。各種類のチップをどれだけ生産したかと、各チップが各部品をどれだけ必要とするかである。この二つを掛け合わせると部品の消費量が得られる。それをチップの種類と設計企業について集計して、総需要を求める。
各種類のチップの生産量の推定は、私たちのAIチップの販売ハブのデータと、企業が開示している在庫額に基づいている。以下の各項では、チップ数量の入力、製造の時間差の調整、在庫の扱い、個数から部品消費量への換算という各段階を詳しく説明する。
2a. 売上から求めるチップの個数
各チップの四半期ごとの出荷量は、Epoch AIのチップ販売ハブから取る。このハブには、2024年と2025年のすべての四半期について、アクセラレータごとの個数の推定がある。
2b. 製造の時間差の適用
製造の時間差
チップ販売ハブは、四半期ごとのチップ出荷量を、一部はチップ設計企業が開示した売上から推定している。しかし、チップが販売された四半期は、その半導体部品が製造・消費された四半期と同じとは限らない。ロジックダイ、HBM、アドバンスト・パッケージングの生産能力は、完成したアクセラレータが売上に計上されたり顧客に出荷されたりする前に消費される。
そこで、四半期ごとの部品の消費量を推定するため、チップの数量を、販売された四半期から、投入物が消費されたとみられる四半期(一つまたは複数)へさかのぼらせる。これはどうしても近似になる。生産のスケジュールは、チップ、設計企業、在庫戦略、サプライチェーンの動向、四半期によって異なるからである。
| 部品 | 仮定した時間差 | 時間差の範囲 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ロジックダイの製造 | 10週間 | 8〜14週間 | BCG/SIA, ECI |
| HBMメモリ | 8週間 | 8〜16週間 | Electronic Component |
| CoWoSパッケージング | 8週間 | 6〜10週間 | Electronic Component |
各部品について、「消費」の定義は、対応する供給量の分母で使われている時点の取り方に合わせている。
ロジックウェハーについては、ウェハーの投入時点ではなく、完成・出荷の時点で消費を数える。ロジックの供給量の分母はTSMCのプロセスノード別のウェハー売上から求めており、TSMCはノード構成を、出荷によるウェハー売上に占める割合として報告している。たとえば2025年第4四半期について、TSMCは「3ナノメートルの出荷がウェハー売上全体の28%を占めた」と述べている。供給量の分母が完成したウェハーの出荷に基づいているので、需要も、該当するロジックウェハーが完成して引き渡される時点に合わせる。これは、完成したアクセラレータが出荷・販売される約10週間前に起こると仮定する。10週間の時間差は暦の1四半期より短いため、関連する消費は前の四半期と出荷四半期にまたがる。そこで10/13と3/13の比で分ける。つまり、ロジックの需要の約77%を前の四半期に、23%を出荷四半期に割り当てる。
CoWoSについては、分母が異なる。公開されているCoWoSの推定は通常、完成したパッケージによる売上ではなく、パッケージングの生産能力を月産ウェハー数で表したものである。そこで、CoWoSの消費は、チップがパッケージング工程に入り、それを占有した時点で数える。このほうが生産能力の制約に合っている。パッケージは、ラインから出るときだけでなく、ラインを流れている間ずっと、希少なCoWoSの生産能力を消費しているからである。HBMはCoWoSの段階でパッケージに組み込まれるので、HBMも同じ時点に割り当てる。
CoWoSとHBMの消費は、完成したアクセラレータが出荷・販売される約8週間前に起こると仮定する。8週間の時間差は暦の1四半期より短いため、関連する消費は前の四半期と出荷四半期の両方にまたがることが多い。そこで、2/3と1/3の単純な比で分ける。HBMとCoWoSの需要の3分の2を前の四半期に、3分の1を出荷四半期に割り当てる。直観的には、生産が四半期の中でほぼ均等に行われると仮定していることになる。ある四半期に出荷されたチップについて8週間さかのぼると、通常はパッケージング段階の作業の大半が前の四半期に入るが、無視できない部分が同じ四半期に残る。四半期の後半に出荷されたチップでは特にそうである。この比は近似だが、消費をすべて前の四半期に割り当てるよりも、HBMとCoWoSの短い時間差をよく捉えられる。
この時点の扱いは近似だが、原則は一貫している。ロジックの需要は、供給量の分母が出荷に基づいているので、完成したウェハーの出荷に合わせる。一方、CoWoSの需要は、供給量の分母が生産能力に基づいているので、パッケージングラインの使用に合わせる。
2c. 売上に表れない生産済みチップの調整
2025年第4四半期の消費量の推定
チップの販売と製造の間に時間差があるため、2025年第4四半期の消費量を推定するには、2026年第1四半期の出荷量についての情報が必要になる。2026年第1四半期に販売されたチップの多くは、生産の段階によっては、2025年第4四半期かそれ以前に、すでに半導体の投入物を消費していたはずである。
したがって、2025年末より前に行われたが、2025年第4四半期の売上には表れていない生産を推定する必要がある。使える根拠は設計企業によって異なるため、企業ごとに異なる方法をとる。AMDについては、2026年第1四半期の決算発表から同四半期の出荷量を推定できるので、2025年第4四半期の部品消費の大半は、時間差を当てはめた通常の出荷の経路で捉えられる。NVIDIAについては、2026年第1四半期の出荷量がまだ観測できないため、2026年1月の在庫残高を、売上にまだ表れていない2025年後半の生産の代理指標として使う。GoogleとAmazonについては、外部のパートナーがチップを製造するため、貸借対照表上の在庫は手がかりにならない。そこで、2025年の生産の推移から2026年第1四半期の数量を外挿する。
NVIDIA
NVIDIAについては、2026年第1四半期の出荷量はまだ十分に観測できない。これを補うため、NVIDIAの2025年度末の在庫残高を、行われたがまだ売上に計上されていない生産の代理指標として使う。仕掛品在庫は、まだ生産工程を流れているチップや部品を表し、製品在庫は、完成したがまだ販売されていない製品を表す。したがって、どちらの区分も、2025年度末より前に消費されたロジックウェハー、HBM、アドバンスト・パッケージングの生産能力を反映しうる。これらの残高を用いて、2025年第4四半期の生産のうち、同四半期の販売に表れない部分と、それに伴う部品の消費を推定する。
この方法は、在庫がはけるという仮定に基づいている。完成間近の仕掛品と、年度末の貸借対照表にある製品在庫は、おおむね1四半期以内に出荷に変わると仮定する。この仮定は厳密には正しくないが、NVIDIAについては理にかなっている。NVIDIAはAIアクセラレータの市場をリードしており、同社のGPUへの需要は依然として非常に高いため、年度末の在庫は過剰供給よりも近い将来の出荷を反映している可能性が高い。ただし、NVIDIAが場合によってはGPUを数四半期にわたって在庫として抱えることもある。たとえばReutersは、NVIDIAが2025年末に約70万基のH200を在庫として抱えており、H200の輸出が承認されしだい中国の顧客に販売するつもりだったとみられると報じた。これについては後で詳しく扱う。
在庫の区分
在庫は三つの区分に分かれ、それぞれがサプライチェーンの異なる段階を表す。
原材料は、受け入れたがまだ生産工程で使われていない物理的な部品や材料である。データセンター向けGPUについては、原材料のうちGPUに帰属する分は主にHBMで、ほかに基板、電力供給部品、その他の補助的な投入物が含まれると仮定する。こう仮定するのは、HBMが先端AI GPUで購入する投入物のうち最も高価なものの一つであり、2025年には供給が制約されていたため、低価格の部品よりも最終組立に先立って調達される可能性が高いからである。
仕掛品在庫は、組立の途中段階にあるチップや部品である。仕掛品の中には、ロジックウェハーの生産能力だけを消費したものもありうる。たとえば、製造済みでまだCoWoSパッケージングに入っていないロジックダイである。ほかの仕掛品はもっと先の段階にあり、ロジック、HBM、CoWoSの生産能力をすでに消費している可能性がある。CoWoSパッケージングではインターポーザーを介してHBMをロジックダイに取り付けるので、パッケージングの工程を始める前にHBMがそろっている必要がある。
製品は、すべての製造段階を経たが、まだ販売されていない完成したアクセラレータである。製品は、ロジックウェハー、HBM、CoWoSパッケージング、補助部品を消費している。完成したチップなので、まずそれが製品在庫に加わった時期を推定し、次に通常の製造の時間差を当てはめて、半導体の投入物が消費された時期を推定する。
NVIDIAの在庫残高は次のとおりである。
| 在庫の区分 | NVIDIA 2026年1月 |
|---|---|
| 原材料 | $3.8B |
| 仕掛品 | $8.8B |
| 製品 | $8.8B |
| 合計 | $21.4B |
在庫金額の個数への換算
在庫残高を個数に換算する前に、まず総在庫のうちGPUの分を切り分ける。NVIDIAの在庫は複数の事業にまたがっている。そこで、総売上に占めるGPU売上の割合(70〜80%)を、GPUの分の代理指標とする。
次に、GPUに帰属する在庫残高を、それに相当するチップの個数に換算する。GAAPの在庫は、販売価格や市場価値ではなく製造原価で計上される。したがって、NVIDIAの製品在庫の残高は、チップが生む売上ではなく、チップの生産コストを表す。金額の残高から個数を推定するため、在庫額をチップごとの部品表(BOM)のコストで割る。
この部品表の推定は積み上げで組み立てている。ロジックダイの製造コストは、ウェハー価格、ウェハーあたりのダイ数、ダイの歩留まり、GPUあたりのチップレット数から推定する。HBMのコストはHBMの容量とGBあたりの価格から、CoWoSパッケージングのコストはパッケージング用ウェハーの価格、ウェハーあたりのパッケージ数、パッケージングの歩留まりから推定する。そこに補助部品のコストを加える。また、パッケージングに失敗すると取り付けたダイとメモリが廃棄されうるので、パッケージング中に見込まれる損失を考慮してロジックとHBMのコストを調整する。こうして各チップのBOMの推定を得て、在庫残高を相当する個数に換算する。各チップのBOMの推定はこちらで確認できる。
在庫の時期と四半期への割り当て
在庫は、貸借対照表に現れた四半期ではなく、元になる半導体の投入物が消費された四半期に割り当てる。原材料、仕掛品在庫、製品はそれぞれ生産の異なる段階を表すので、これが重要になる。
原材料については、製造の時間差を追加で当てはめることはしない。データセンター向けGPUに帰属する原材料は主にHBMで、ほかに基板やその他の部品が含まれると仮定する。ここで問題になるのはHBMの購入や受け入れであり、チップの完成ではない。そこで、原材料の在庫を、HBMが調達されたと推定する四半期に直接振り分ける。HBM3Eの供給は2025年後半に最も急速に拡大したので、年度末の備蓄を2025年第3四半期に30%、第4四半期に70%割り当てる。
仕掛品については、通常の出荷の時間差ではなく、在庫の時期について別の扱いを当てはめる。仕掛品はある時点の在庫残高であり、NVIDIAがすでに所有または管理しているが、まだ製品在庫に達していないチップや部品を表す。仕掛品は、ロジックウェハーの生産能力だけを消費したチップと、HBMとパッケージングの生産能力も消費したチップが混ざったものとしてモデル化する。
中央値では、仕掛品の70%がパッケージングの段階に達しており、したがってロジック、HBM、CoWoSを消費していると仮定する。この根拠は、チップが仕掛品の各段階で過ごす時間の相対的な長さにある。GPUは、ロジックダイがTSMCから届いた時点で仕掛品に入る。その後、ウェハーの検査とダイシングにおよそ1〜4週間かかってからCoWoSパッケージングが始まり、さらに約8週間かけてCoWoSパッケージング、最終組立、検査を経て製品に至る。つまり、仕掛品として過ごす時間のうちロジックだけの段階は3分の1にも満たず、残りの3分の2以上はCoWoSの開始後である。そこで、どの時点で切り取っても、仕掛品の約70%はすでにHBMとCoWoSの生産能力を消費していると仮定する。チップの世代によるリードタイムの違いや年度末の生産の影響を捉えるため、この割合は不確実なもの(範囲55〜82%)としてモデル化する。
仕掛品による部品の消費は、主に2025年第4四半期に割り当てる。NVIDIAの会計年度末である2026年1月26日の時点でまだ仕掛品だったチップは、その直前に生産の最中だった可能性が高い。CoWoSパッケージングや最終検査に達していた仕掛品のチップでも、関連するロジックウェハーの製造はおよそ8〜12週間前に行われた可能性が高く、主に暦年の2025年第4四半期に入る。HBMとCoWoSによる一体化は工程の後半で行われるので、1月26日の時点でまだ仕掛品だったチップについては、やはり第4四半期に入る可能性が高い。
NVIDIAの会計年度末は暦年末より4週間近く遅いため、この扱いは2025年第4四半期の消費量を過大に見積もっているかもしれない。1月26日の残高に含まれる在庫の一部は、暦年の2026年第1四半期初めの部品消費に当たる。この近似を受け入れるのは、単純にするためであり、また仕掛品の残高は、未完成の個々の製品の時期を正確に特定するためではなく、NVIDIAの2025年後半の生産パイプラインを捉えるためのものだからである。
製品については、通常の製造の時間差を当てはめる。製品は完成したアクセラレータなので、割り当てた生産四半期を完成の時点として扱える。ロジックダイの製造は10週間の時間差(前の四半期に10/13、同じ四半期に3/13)で、CoWoS/HBMによる一体化は通常の比(前の四半期に3分の2、同じ四半期に3分の1)でさかのぼらせる。NVIDIAの製品在庫の残高は、2025会計年度の第2・第3・第4四半期にそれぞれ5%、10%、85%で振り分ける。そのうえで、会計四半期ごとの製品在庫の残高を、通常の製造の時間差を用いて暦四半期ごとの部品消費に対応づける。
NVIDIAの時期についての主な仮定は次のとおりである。
| 在庫の区分 | 第3四半期 | 第4四半期 | 注記 |
|---|---|---|---|
| 原材料 | 30% | 70% | HBMは2025年を通じて供給が制約されていた。メモリメーカーは年間を通じてHBM3eの生産を拡大したので、NVIDIAが年度末に抱える備蓄は徐々に取得されたもので、最も大きな部分は第4四半期に届いた。この比はこうした段階的な積み増しを反映している。 |
| 仕掛品 – ロジックだけが完成したチップ | 0% | 100% | ロジックだけが完成した仕掛品のチップは、年度末直前の数週間にロジックダイが製造されたはずである。その消費の100%を第4四半期に割り当てる。 |
| 仕掛品 – すべての工程を経たチップ | 0% | 100% | 現在のモデルでは、ロジックとCoWoS+HBMの両方の工程が第4四半期に入る。 |
消費について次の仮定を当てはめる。
原材料:GPUに帰属する原材料のうちHBMを30〜70%、中央値50%としてモデル化する。
仕掛品:仕掛品による消費を、無視できない不確実性を持たせてチップの種類に割り当てる。NVIDIAの仕掛品は主にBlackwell世代のチップからなると仮定し、B300を中央値80%(範囲70〜90%)、B200を中央値20%(範囲10〜30%)とする。2025年第4四半期までに、生産パイプラインではBlackwellの立ち上げがHopperをほぼ置き換えており、B300は販売個数の63%を占めていた。販売に占めるB300の割合は今後も上がると見込まれるので、NVIDIAの仕掛品は中央値でB300が80%としてモデル化する。
製品:NVIDIAの2026年1月の製品在庫の残高88億ドル全体を用い、後述するように行き場を失ったH200の在庫について調整する。行き場を失ったH200の在庫を差し引いたあと、残りの製品在庫の残高をBlackwellのチップに割り当てる。中央値でB300が75%、B200が25%である。
AMD
AMDは2026会計年度第1四半期の決算からInstinctの出荷量を推定できるので、扱いが異なる。通常の製造の時間差を当てはめれば、2026年第1四半期の出荷量で、AMDの2025年第4四半期のロジック、HBM、CoWoSの消費の多くがすでに捉えられる。つまり、AMDの2025年12月の仕掛品の残高は、のちに2026年第1四半期の出荷に流れ込んだチップの、生産パイプラインの途中を切り取ったものにおおむね当たる。その仕掛品を別にモデル化すると、同じ生産を二重に数えるおそれがある。
ただし、AMDが製造したInstinct GPUが半導体の投入物を消費しながら、2026会計年度第1四半期の出荷期間を過ぎても売れ残っていた場合には、出荷に基づく数量はAMDの部品消費をなお過小に数えている可能性がある。このおそれは、NVIDIAよりもAMDのほうが大きい。AMDのInstinctの販売はより不安定だった。MI325Xの需要は予想より弱く、MI308Xは輸出規制による混乱を受け、データセンターAIの売上は2025会計年度第4四半期から2026会計年度第1四半期にかけて前四半期比で減少しさえした。こうした要因から、AMDについては在庫がはけるという仮定が弱くなる。完成したInstinct GPUは、近い将来の出荷にすんなり流れずに、在庫として積み上がった可能性がある。
AMDの在庫の開示は、この扱いを裏づけている。AMDは、2025年の在庫の増加は主に、先端プロセスノードのデータセンター製品の拡大を続けるためだったと述べている。在庫の積み増しの構成も参考になる。2024会計年度末から2025会計年度末にかけて、原材料は約3億5,000万ドルから9億900万ドルへ(+159%)、仕掛品は約43億ドルから48億ドルへ(+11%)、製品は約11億ドルから22億ドルへ(+105%)増えた。ここから、AMDの生産パイプラインは大きいままだった一方、在庫の積み増し分は、未完成の仕掛品が比例して増えたものではなく、将来の生産に先立って調達した投入物と、貸借対照表に載ったままの完成品に集中していたと考えられる。
したがって、製品は仕掛品とは異なる。AMDの2026年3月の製品在庫の残高は、2026会計年度第1四半期の出荷期間を過ぎてもまだ出荷されていなかった完成品を表す。これらのGPUはロジック、HBM、CoWoSの生産能力を消費しているが、2026会計年度第1四半期の出荷の経路では捉えられない。そこで、AMDの仕掛品は除外するが、2026会計年度第1四半期末に売れ残っていた完成済みのInstinct GPUについて、製品の調整を別に加える。
HBMの調達は、パッケージング段階でのHBMの取り付けとは別の出来事なので、AMDの原材料も考慮に入れる必要がある。原材料としてのHBMは、チップがパッケージングに入る前に購入されていた可能性があるため、出荷に基づく時間差の調整では十分に捉えられない。
AMDの2026年3月の在庫残高は次のとおりである。
| 在庫の区分 | AMD 2026年3月 |
|---|---|
| 原材料 | $752M |
| 仕掛品 | $4.7B |
| 製品 | $2.5B |
| 合計 | $8.0B |
在庫金額の個数への換算
AMDについては、2025年にInstinct GPUが約72億ドルの売上を生んだと推定している。AMDの総売上346億ドルと比べると、Instinctは総売上の約21%を占めることになる。しかし、AMDは2025年の在庫の増加を先端プロセスのデータセンター製品によるものとしており、この区分にはInstinct GPU、EPYCサーバーCPU、関連するデータセンター製品が含まれる。在庫の積み増しはAMDの事業全体に均等に広がったのではなく、先端のデータセンター製品に集中していたので、在庫に占めるInstinct GPUの割合は、総売上に占める割合よりいくらか高いものとしてモデル化する。2025年を通じたInstinctの拡大と、AMDのデータセンター向け在庫にはGPU以外の部分もかなり含まれることの両方を反映して、範囲15〜70%、中央値40%を用いる。
次に、NVIDIAと同じBOMの方法を用いて、Instinctに帰属する在庫残高を相当するチップの個数に換算する。GAAPの在庫は製造原価で計上されるので、在庫額を、ロジックダイの製造、HBM、CoWoSパッケージング、パッケージングの歩留まり損失、補助部品から積み上げたチップごとのBOMのコストで割る。
AMDの原材料
AMDの原材料については、製造の時間差を追加で当てはめることはしない。問題になるのはHBMの購入や受け入れであり、チップの完成ではない。そこで、AMDの原材料としてのHBMの調達を、HBMが調達されたと推定する四半期に直接振り分ける。AMDの2026年3月28日時点の原材料の残高(7億5,200万ドル)を用い、2025年第4四半期に30%、2026年第1四半期に70%を割り当てる。
AMDの製品
AMDの2026年3月28日時点の製品在庫の残高25億ドルに、在庫に占めるInstinctの割合(15〜70%、中央値40%)を掛けたものを用いる。これは売上ではなく原価ベースの在庫として扱い、ASPではなくチップごとのBOMの仮定を用いて部品の消費量に換算する。製品は完成品なので、この調整は、ロジック、HBM、CoWoSパッケージング、補助部品というBOMの全内容を含むものとしてモデル化する。
この残高は、貸借対照表に現れた四半期に割り当てるのではなく、元になるチップが完成して製品在庫に加わった四半期に割り当て、そのうえで通常の製造の時間差を当てはめて部品の消費をさかのぼらせる。SKUへの割り当てはこれまでと同じで、中央値でMI325Xが20%、MI350Xが30%、MI355Xが50%である。
| 完成して製品在庫に加わった四半期 | p5 | p50 | p95 |
|---|---|---|---|
| 2025会計年度第3四半期 | 5% | 20% | 30% |
| 2025会計年度第4四半期 | 20% | 35% | 50% |
| 2026会計年度第1四半期 | 30% | 45% | 70% |
モンテカルロの各サンプルで、三つの割合は合計が100%になるように正規化する。そのうえで、各製造四半期に通常の製造の時間差を当てはめる。ロジックダイの製造には10週間の時間差を用い、消費の約77%を1四半期前にずらし、23%を生産完了と同じ四半期に残す。CoWoS/HBMによる一体化は8週間の時間差に従い、前の四半期に3分の2、同じ四半期に3分の1とする。たとえば、2026年第1四半期に完成した製品は、ロジックの消費の大半を2025年第4四半期に計上し、CoWoS/HBMの消費は3分の2を2025年第4四半期、3分の1を2026年第1四半期に分ける。
この調整は、在庫から推測した手がかりであり、製品単位で開示された在庫の数値ではない。AMDの在庫は全社のものであり、製品在庫は出荷の時期や顧客の検収に左右されうる。また、輸出規制によって生産、在庫、売上の関係がゆがむこともある。そこで、不確実性の範囲を広くとり、この調整を、AMDの売れ残ったGPUの個数の正確な推定としてではなく、完成したが売れ残ったInstinctの生産としてありうる量を捉える手段として解釈する。
GoogleとAmazon
GoogleとAmazonについては、異なる方法をとる。完成したチップの在庫を抱えるNVIDIAやAMDと違い、GoogleとAmazonはチップの製造とパッケージングを外部のバックエンドパートナーに頼っている。そのため、まだ出荷されていない完成したチップは両社の貸借対照表に現れない。GoogleとAmazonには在庫による方法を使えないので、2025年の生産の推移から2026年第1四半期の数量を外挿する。
Amazonについては、2025年のTrainium2の推移から先を予測する。数量は2025年の間、前四半期比で約17%ずつ増え、21万個、25万個、29万個、33万5,000個だった。対数線形回帰、幾何平均による予測、AWSが発表した2026会計年度の設備投資見通し2,000億ドルとの照合は、いずれも2026年第1四半期について約39万個という値に収束する。単純にするため、Amazonの2026年第1四半期のASIC生産はTrainium2としてモデル化するが、Trainium3の生産もすでに始まっている。立ち上げ時期の不確実性と、Trainium2とTrainium3の世代構成のあいまいさを考慮して、±30%の不確実性の幅を当てはめる。
Googleについては、Broadcomの2026会計年度第2四半期のAI半導体の見通しを用いて、2026年第1四半期のTPUの数量を推定する。Broadcomは、2026会計年度第2四半期のAI半導体売上の見通しを107億ドルと示した。まず、AIネットワーク関連の売上をカスタムASICの売上から切り分ける。Broadcomの2026会計年度第1四半期の決算説明会で、経営陣は、第1四半期にはAIネットワーク関連がAI売上の約3分の1を占め、第2四半期には約40%に上がる見込みだと述べた。そこで、第2四半期のAIネットワーク関連の売上を42億8,000万ドル、残りのカスタムASIC/XPUの売上を64億2,000万ドルと推定する。
2026会計年度第2四半期のBroadcomのカスタムASIC/XPUの売上のうち、85%をGoogle TPUが占めると仮定する。これは、2026会計年度第2四半期のBroadcomのGoogle TPU関連の売上が約54億6,000万ドルであることを意味する。
この2026会計年度第2四半期のTPU売上の行を、TPUの数量を求めるスクリプトが使う入力シートに加えた。スクリプトは、これまでのTPUの四半期と同じ売上から個数への換算の論理を用いて、会計四半期の売上の推定を暦四半期のTPUの数量に換算する。これにより、暦年の2026年第1四半期のTPUの数量の推定が得られる。これを部品消費のモデルに入力し、ロジックウェハー、HBM、CoWoSパッケージングの生産能力が消費された四半期へとさかのぼらせることができる。得られた2026年第1四半期のTPUの個数の推定は次のとおりである。
| TPUチップの種類 | 2026年第1四半期の推定個数 | 90%信頼区間 |
|---|---|---|
| TPU v7 | 310k | 232k – 399k |
| TPU v6e | 131k | 29k – 229k |
| 合計 | 441k | 261k – 628k |
その他の調整
輸出規制による評価損
輸出規制の変更により、製造されたものの販売できないチップが生じた。これらのチップは生産中にロジックウェハー、HBM、アドバンスト・パッケージングの生産能力を消費したが、輸出規制で販売が阻まれれば売上には表れない。そこで、評価損の対象となった数量を需要に足し戻し、その消費を、チップが製造されたと推定する四半期に割り当てる。
NVIDIAは、2025年4月の米国の輸出規制を受けて、H20 GPUについて19億ドルの在庫評価損を開示した。H20の部品表のコストで換算すると、約60万〜70万個になる。これは、輸出規制に引っかかったH20 GPUが60万〜70万個という独自に報じられた推定と一致しており、私たちのBOMモデルを検証する一つの材料になる。
対象となったH20は、主に規制が発効する直前の数か月に完成して在庫に加わったと仮定する。割り当てを2025年第1四半期に重く置くのは、H20の販売数量が2024年第4四半期と2025年第1四半期のどちらでも1四半期あたり約35万個と高い水準にあったからである。つまり、それより前の四半期のH20の生産の多くは、在庫として抱えられるのではなく販売された可能性が高い。したがって、2025年4月の評価損はもっと最近の在庫の積み増しによるもので、対象の大半は新たな規制が発効する少し前の2025年第1四半期に生産された可能性が高い。
下の表は、対象となったH20が完成して在庫に加わった時期について、仮定した中央値を示す。
| 完成した月 | H20の評価損対象の個数に占める割合 |
|---|---|
| 2024年12月 | 9% |
| 2025年1月 | 15% |
| 2025年2月 | 23% |
| 2025年3月 | 31% |
| 2025年4月 | 22% |
| 合計 | 100% |
これらのチップは主に2025年第1四半期と第2四半期に完成したが、その部品の投入物は、完成したGPUが在庫に入る前に消費されていた。製造の時間差を当てはめると、2025年2月、3月、4月に完成したH20は、それぞれおよそ2024年12月、2025年1月、2025年2月にロジックウェハーの生産能力を消費していたことになる。HBMとCoWoSの生産能力は、それぞれおよそ2024年12月、2025年1月、2025年2月に消費されていたはずである。
その結果、対象となったH20は主に2025年第1四半期と2025年第2四半期の初めに完成したが、その半導体の投入物の無視できない部分は2024年第4四半期に消費されていた。
AMDは、2025年第2四半期にMI308Xの在庫について総額8億ドルの評価損を計上した。このうち3億6,000万ドルは、輸出許可が下りて該当する製品が販売された2025年第4四半期に戻し入れられた。正味で未解消の引当金は4億4,000万ドルである。販売されたチップと評価損の対象となったチップは同じ生産ロットから来ているので、時期については両方を同じように扱う。ロット全体をMI308Xの部品表のコストで換算し、H20に用いたのと同じ2024年第4四半期/2025年第1四半期の生産の割り当てを当てはめる。二重計上を避けるため、チップ販売ハブに現れる2025年第4四半期のMI308Xの出荷は、通常の出荷個数の計算から除外する。
H200の在庫
Reutersは、NVIDIAが2025年末に約70万基のH200を在庫として抱えていたと報じた。これらのチップは生産中にサプライチェーンの生産能力を消費したが、年末までにはまだ売上を生んでいなかった。
これらは2025年第4四半期の在庫として扱うのではなく、生産された四半期に割り当てる。下の表は、行き場を失ったH200が完成して在庫に加わった時期について、仮定した中央値を示す。
| 完成した月 | H200の在庫個数に占める割合 |
|---|---|
| 2025年第1四半期 | 15% |
| 2025年第2四半期 | 22% |
| 2025年第3四半期 | 45% |
| 2025年第4四半期 | 18% |
| 合計 | 100% |
この振り分けは二つの仮定に基づいているが、大きな不確実性を伴う。第一に、NVIDIAが完成したGPUを何四半期にもわたって大量に在庫として抱える可能性は低い。まだ需要の強い製品であればなおさらである。2024年第4四半期にはH200が販売個数の大半を占め、約68万個が販売された。ここから、H200の生産ラインは2025年に入る時点で大規模に稼働していたと考えられる。2025年第1四半期にもH200の販売は約33万個と、なお相当な水準にあった。そこで、行き場を失ったH200の在庫の大半は、2025年初めに作られて年末まで抱えられていたチップではなく、比較的最近の生産によるものと仮定する。
第二に、Blackwellが本格的な生産と販売に移りつつあったので、2025年後半にはH200の生産を先細りさせている。BlackwellがNVIDIAのHBM、CoWoS、先端ノードのロジックの生産能力をより多く吸収するにつれて、H200の生産は減った可能性が高い。在庫が報告されたのは年末だが、行き場を失ったH200の生産の大半を第4四半期に置かないのはこのためである。代わりに、最大の割合を第3四半期に置く。年末に在庫として残っていてもおかしくないほど最近であり、かつ、Blackwellの立ち上げがHopper世代の生産を完全に置き換える前で、H200のラインや供給の確約がまだかなり動いていた可能性がある程度には早い時期だからである。
製品在庫の会計処理では、行き場を失った70万基のH200をH200の部品表のコスト(3,480ドル)で評価し、その額(24億5,000万ドル)をNVIDIAの製品在庫の残高全体から差し引く。残りの金額はBlackwellのチップに割り当てる。これにより、H200とBlackwellの生産が二重計上されることなく、それぞれの消費四半期に割り当てられる。
3. 個数から部品消費量への換算
出荷量、在庫の調整、輸出規制による評価損の調整を含めて、各チップの四半期ごとの個数が得られたら、チップごとの部品表の仕様と歩留まりの推定を用いて、その個数をサプライチェーンの各部品の消費量に換算する。
ロジックウェハーの消費量は、ダイの歩留まりとパッケージングの歩留まりで決まる。
- ウェハーあたりのダイ数:ダイサイズとGPUあたりのチップレット数で決まる。300 mmウェハーで縁の損失を3 mmと仮定する。
- ロジックダイの歩留まり:ウェハー上のダイのうち検査に合格するものの割合。先端ノードでの歩留まりは通常50〜85%で、ダイの面積が大きいほど下がる。
- パッケージングの歩留まり損失:CoWoSパッケージングに失敗すると、取り付けたロジックダイは廃棄される。ロジックウェハーの消費量は、この追加の損失を考慮しなければならない。
ロジックウェハー = 個数 ÷ (DPW × logic_die_yield × packaging_yield)
CoWoSパッケージングは、TSMCのアドバンスト・パッケージング施設で12インチウェハー上で行われる。ウェハー1枚から複数のパッケージが作られるが、すべてがパッケージングの工程を無事に通過するわけではない。
- CoWoSウェハーあたりのパッケージ数(PPW):各アクセラレータのインターポーザーの占有面積から積み上げで求める。すべてのチップレットとHBMスタック(標準的な11 × 11 mmの占有面積)のダイ面積を並べてインターポーザーの寸法を推定し、縁の損失を考慮して300 mmウェハーにインターポーザーがいくつ収まるかを計算する。
- パッケージングの歩留まり:CoWoS-S(Hopper、TPU、AMDのチップ、Trainiumに使われる)は比較的成熟しており、歩留まりは95〜99%である。Blackwellのマルチチップレット設計向けに導入されたCoWoS-Lは、当初は歩留まりが低かったが、2024年後半までにマスクの変更で歩留まりの問題は解決した。CoWoS-Lの歩留まりは2025年の間に改善したが、工程がより複雑で、プロセスも比較的新しいことから、なおCoWoS-Sの基準よりも低いものとしてモデル化している。
CoWoSウェハー = 個数 ÷ (PPW × packaging_yield)
HBMの消費量
HBMの需要は、市場単位の供給量の分母に合わせて米ドルで表す。
- チップあたりのHBM容量:各アクセラレータは、HBMの総容量がGB単位でわかっている(例:H200は141 GB、B200は192 GB、B300は288 GB)。
- GBあたりのHBM価格:HBMの各世代のGBあたりの価格を、報道や外部のアナリストの推定から集める。
- パッケージングの歩留まり損失:失敗したCoWoSパッケージに含まれるHBMは廃棄されるので、実質的なHBMの需要は個数あたりの数値を上回る。
HBM($)= (個数 × HBM_per_chip_GB × price_per_GB) ÷ packaging_yield
ダイサイズ、ウェハーあたりのダイ数、ロジックの歩留まり、ウェハーあたりのパッケージ数、パッケージングの歩留まりなど、部品表のパラメータにはすべて、P5、中央値、P95の不確実性の範囲がある。モンテカルロ分析では、これらの範囲からサンプリングする。
部品コストの推定
また、物理的な部品の需要を金額に換算して、AIチップ設計企業別の四半期ごとの半導体と部品への支出を推定する。部品コストのグラフは、総支出をロジック、CoWoS、HBM、補助部品の四つの区分に分けて示す。
ロジックのコストは、消費したロジックウェハーの枚数に、該当するノード別のウェハー価格を掛けて計算する。ノードの価格はパラメータシートから取る。中央値では、ウェハー1枚あたり3 nmで約1万9,000ドル、5 nmで1万7,500ドルを用いる。
CoWoSのコストは、消費したCoWoSウェハーの枚数に、該当するパッケージング用ウェハーの価格を掛けて計算する。CoWoS-Sはウェハー1枚あたり1万2,000ドル、CoWoS-Lは1万7,000ドルとする。
HBMのコストは、もともとコストとしてモデル化しているので、モデルから直接取る。
補助部品のコストは、ロジック、CoWoS、HBMに含まれない、PCBや電力供給部品など個数あたりの部品を対象とする。チップごとに固定の補助部品のコストを当てはめ、その額はTPU v5eの1個あたり約250ドルからMI355Xの1個あたり約800ドルまでである。
四つのコストの区分はすべて、生産が該当するサプライチェーンの投入物を消費した四半期に割り当てる。これには、出荷された個数による需要、仕掛品と製品の在庫の積み増しと取り崩し、輸出規制による評価損、原材料としてのHBMの在庫の変化が含まれる。グラフの対象期間は2024年第1四半期から2025年第4四半期までである。
結果の解釈
2025年に、米国の上位4社のAIアクセラレータ設計企業は、推定で次のものを消費した。
- 世界のHBM市場350億ドルの約90%(2024年の約66%から上昇)
- TSMCのCoWoSパッケージング生産能力の約87%
- TSMCの先端ノードのロジック生産能力の約10%(2024年の約7.1%から上昇)
今やAIはアドバンスト・パッケージングとHBMの市場の大半を占めているが、最先端のロジック生産能力の消費者としては、まだ1桁台の割合にとどまる。N3ファミリーのウェハーは、Apple 1社だけで、AIアクセラレータ設計企業4社の合計よりも多く消費している可能性が高い。2024年と2025年のAIアクセラレータのサプライチェーンのボトルネックは、パッケージングとメモリだった可能性が高い。これは、最先端のロジックにはまだ融通がきいた一方で、CoWoSは「2025年から2026年にかけて売り切れ」だというTSMCのCEOの繰り返しの発言と一致する。
NVIDIAは圧倒的な地位にあり、2025年を通じてシェアを大きく固めた。
| 部品 | NVIDIAの2024年のシェア | NVIDIAの2025年のシェア | 変化 |
|---|---|---|---|
| ロジック | 5.4% | 7.4% | +2.0 pp |
| CoWoSパッケージング | 53.4% | 58.5% | +5.1 pp |
| HBM | 45.6% | 69.3% | +23.7 pp |
部品の中で最も大きく動いたのはNVIDIAのHBMのシェアで、前年比24ポイント上昇した。NVIDIAのHBM消費量は、世界のHBM市場そのものよりはるかに速く増えた。市場は180億ドルから350億ドルへとおよそ2倍になったが、NVIDIAのHBM消費量は約84億ドルから約243億ドルへと3倍近くになった。
この突出した伸びは二つの要因による。(1)Blackwellで、NVIDIAのチップあたりの平均HBM搭載量が急増した。B300はチップあたり288 GBのHBM3eを搭載しており、H100の80 GBを大きく上回る。そのため、2025年下半期に構成がB300に移るにつれ、NVIDIAの個数あたりのHBM消費量は大きく膨らんだ。(2)米国のHBMの輸出規制が2024年12月に発効し、中国のHBM消費量を急減させ、供給のかなりの部分を米国のAIアクセラレータ設計企業に振り向けた。
部品のボトルネック
生産量が増え、チップの仕様が変わり、主要な各部品の供給がそれぞれ異なる速さで拡大するにつれて、AIチップ製造のボトルネックは年ごとに移りうる。
2024年末から2025年初めにかけて、CoWoSは供給が深刻に制約されていたが、TSMCが生産能力を拡大するにつれて緩和した。追跡しているAI設計企業4社は、CoWoSの総供給量の98%を2024年第4四半期に、99%を2025年第1四半期に消費したと推定している。2025年第2四半期以降、TSMCはCoWoSの生産能力を急速に拡大し、AIによる消費の割合は2025年第2四半期に83%、第3四半期に86%、第4四半期に84%へと下がった。これは、TSMCのCoWoSのWPMが2024年末から2025年末にかけておよそ2倍(約3万9,000から約6万6,000 WPMへ)になったことと整合する。また、BlackwellのためにCoWoS-Lは逼迫したままだった一方で、特にCoWoS-Sでは2025年半ばに在庫が積み上がったという業界の報道とも合致する。
HBMは逆の方向に動いた。2024年の時点ですでに供給は制約されていたが、2025年下半期には極めて逼迫した。追跡しているAI設計企業4社は、2024年を通じて世界のHBMの約64〜68%を消費していた。これは相当な割合だが、まだ完全に制約となるほどではなかった。2025年には、Hopperよりはるかに多くのHBMをチップあたりに搭載するBlackwellの立ち上げが進み、米国のHBMの輸出規制で中国のHBM消費量が急減した。その結果、4社のシェアは急上昇し、第3四半期に92%、第4四半期に97%に達した。年の後半には、AIアクセラレータ設計企業が、メモリメーカーが生産できる追加分のHBMを事実上すべて吸収しており、SK HynixとMicronはその年の分が売り切れとなっていた。
逼迫したHBM市場で、NVIDIAは生産能力を確保した。世界のHBM市場がおよそ2倍にしかならなかったのに対し、NVIDIA単独のHBM消費量は3倍近くになり、NVIDIAのシェアは46%から69%に上がった。これは、Blackwellの需要に応え、将来のアーキテクチャの立ち上げを支えるために在庫を積み増し、「リードタイムの長い部品を確保するために発注している」というNVIDIA自身の説明と整合する。
「その他(Other)」の残差
需要の表の各期間には「その他」の行があり、追跡している設計企業4社に割り当てられない世界の部品供給量を表す。この残差にはいくつかのものが含まれうる。私たちが追跡していないチップ設計企業が消費した部品の生産能力、その期間に利用可能だったが使われなかった生産能力、私たちが直接モデル化していない委託先が持つ上流の在庫、部品消費量の推定の誤差である。
「その他」の行があることで、積み上げ棒グラフの合計が世界の供給量の100%になる。この行は、未使用の生産能力のきれいな推定ではなく、どこにも帰属しない残差として解釈すべきである。正の残差は、追跡していない設計企業による実際の需要、未使用の生産能力、上流の在庫、または追跡している設計企業の需要の過小推定を表しうる。残差がゼロであっても、追跡している設計企業4社が利用可能な供給をすべて消費したとは限らない。不確実性や時期の仮定によって、推定した需要が供給量の分母の中央値を上回ったという意味のこともある。
残差は正確な点推定として扱うべきではないが、それでも手がかりにはなりうる。残差の変化が既知の市場の動きと合致し、追跡している設計企業4社以外の需要について有用な手がかりを与える場合もある。たとえば2024年第4四半期には、HBMの「その他」の残差が、推定した世界のHBM供給量の36%、つまり四半期の市場75億ドルのうち約26億5,000万ドルに上がっている。つまり、その四半期に世界で供給されたHBMの3分の1以上は、米国の主要チップ設計企業4社では説明できない。残差が単なるモデルのノイズなら、これは意外である。しかしこれは、2024年12月末に米国のHBMの輸出規制が発効する前に、中国企業がHBMを積極的に備蓄したという報道と合致する。
SemiAnalysisは、Samsungが2024年12月だけで約700万個のHBMスタックを中国企業に輸出したと推定している。それらが主に16GBのHBM2eスタックだったとすると、GBあたり12〜15ドルで、12月だけで中国へのHBM輸出は約13億〜17億ドルになる。24GBではなく16GBのスタックと仮定するのは、HuaweiのAscend 910Bが4スタックで合計64GBのHBM2eを搭載しているからである。この12月の備蓄は、2024年第4四半期の「その他」の残差のかなりの部分を占めており、第3四半期から第4四半期にかけて残差が急増した理由を説明する助けになる。
2025年第1四半期には、輸出規制が効き始めたことで、HBMの残差は推定した四半期の供給量の15%、つまり約9億4,000万ドルへと大きく下がった。この減少は、規制の発効後に中国のHBM消費量が減ったことと整合する。
したがって、「その他」は、意味はあるが不完全な手がかりとして解釈している。年単位では、残差はかなり頑健であるように見える。2025年通年では、追跡している需要が総供給量を上回る確率は、CoWoSでほぼ0%、HBMで約5%である。ここから、内訳はなお不確かだが、年単位の残差は実在する可能性が高いと考えられる。CoWoSについては、残差は、どこにも帰属しないAI需要と、生産能力の拡大中に使われなかった一部の生産能力が混ざったものを反映している可能性が高い。HBMについては、追跡していない需要、上流の在庫、残っているモデル誤差が混ざったものを反映している可能性が高い。
四半期単位の残差には、より注意が必要である。これらの推定は時期の仮定により敏感だからである。2025年第1四半期のCoWoSは不安定な四半期である。追跡している需要と供給量の中央値が近いため、モンテカルロのサンプルのうち無視できない割合で、追跡している需要が供給を上回る。2025年第4四半期のHBMも、在庫の仮定によって年度末の仕掛品と製品の消費の多くがその四半期に集中するため、影響を受けやすい。こうした場合、残差は、余剰の生産能力や追跡していない需要の正確な推定ではなく、おおよその方向を示す手がかりとして読むべきである。
部品コストの構成
AIチップの部品への総支出は次のように推定している。
| 年 | ロジック | CoWoS | HBM | 補助部品 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | $3.1B | $4.0B | $12.1B | $2.8B | $22.0B |
| 2025 | $7.0B | $8.3B | $31.5B | $5.3B | $52.1B |
HBMは突出して最もコストの大きい部品であり、2025年のAIチップの部品への支出全体の60%を占めている。部品への総支出は、2024年第1四半期の32億ドルから2025年第4四半期の174億ドルへと増え、2年間で5.4倍になった。2025年第4四半期の部品への支出のうち、NVIDIAだけで134億ドル(77%)を占める。
外部の推定との相互検証
方法論の中核となる仮定を検証するため、私たちの推定を、独立に公表されたアナリストや業界の推定と比べる。独立に導かれた推定どうしがよく一致すれば、結果への確信が高まる。
NVIDIAのCoWoS需要
2025年のNVIDIAのCoWoSウェハーについての私たちの中心的な推定は約37万7,000枚(世界の供給量の約59%)で、独立に公表された次の推定と一致している。
- GFHK:37万7,000枚
- Digitimes:37万枚
- JP Morgan:38万5,000枚
- Global Semi Research:約40万枚
- SemiWiki:2025年の世界のCoWoS生産能力の需要のうち、NVIDIAが約63%を占めると推定
JP Morganは、NVIDIAの2024年のCoWoS消費量を19万2,000枚とも推定しており、私たちの推定である18万7,000枚と合致する。
AMDのCoWoS需要
2025年のAMDのCoWoSウェハーについての私たちの推定である約5万5,000枚は、JP Morganの推定である5万2,000枚とよく一致している。世界のCoWoS生産能力の需要のうちAMDが8%を占めるというSemiWikiの推定は、私たちの結果である8.6%と合致する。JP MorganはAMDの2024年のCoWoSウェハーを4万5,000枚とも推定しており、これは私たちの推定である4万9,000枚に近い。
Google TPUのCoWoS需要
2025年の世界のCoWoS需要に占めるGoogle TPUのシェアについての私たちの推定である約13%は、SemiWikiの推定である13%と整合する。Global Semi Researchは、Googleの2025年のCoWoS需要を約8万枚と推定しており、私たちの推定である8万1,000枚とほぼ同じである。JP Morganの推定はこれより高く、BroadcomのCoWoSウェハーを2025年に9万6,000枚、2024年に7万枚としている。これに対して私たちの推定は、2025年に8万1,000枚、2024年に5万1,000枚である。JP Morganの方法論は公開されていないため、どのモデル化の仮定がこの食い違いを生んでいるのかは判断しにくい。また、JP Morganはこの需要をBroadcomの区分にまとめているので、MetaのカスタムASICのような、TPU以外のASICプロジェクトも一部含まれている可能性がある。
HBMの市場シェア
2025年のHBMのシェアについての私たちの推定は、外部の数値とおおむね整合している。TrendForceは、2025年に消費された世界のHBMの金額に占めるシェアを、NVIDIAが68%、AMDが10%、Googleが9%、Amazonが8%と推定している。私たちの中央値の推定は、NVIDIAが69%、AMDが7%、Googleが8%、Amazonが6%である。
限界と不確実性の要因
売上の配分
企業は売上をアクセラレータ単位ではなく事業セグメント単位で報告している。売上を個々のチップの世代に配分するには、製品構成について仮定を置く必要があり、それが無視できない誤差をもたらしうる。複数の世代の製品が同時に販売される移行期の四半期では特にそうである。
時間差の仮定
製造の時間差の推定は、公開されている業界の資料から導いたもので、典型的な期間を表している。実際の時間差が異なる場合(たとえば、TSMCがAIチップの製造期間の短縮を優先した場合)、時間差を調整した供給の期間がずれ、分母と計算されるシェアが変わる。各暦年の中で供給が均等に分布しているという仮定は単純化であり、生産能力が急速に変化する時期には多少の誤差をもたらす。
在庫の解釈
企業は、原材料、仕掛品、製品の構成をアクセラレータ単位では開示していない。在庫の各区分に何が入っているか(原材料にはHBM、仕掛品には製造済みのダイ、製品には完成したパッケージ)についての私たちの仮定は作業上のモデルであり、直接観測された事実ではない。実際の会計処理が異なれば、在庫から推定した消費量はずれている可能性がある。
仕掛品の2段階モデルは、仕掛品のパイプラインにあるチップの平均的な段階についての仮定である。実際の分布は、公開されている提出書類からは観測できない。
GoogleとAmazonについては在庫をモデル化していない。そのため、両社のサプライチェーンでの消費量は過小に評価されている可能性が高い。特にHBMについては、TPUとTrainiumの立ち上げを考えると、CoWoSパッケージングに先立つ原材料の在庫がかなりの量になっている可能性がある。
在庫に占めるGPUの割合
企業の総在庫からGPU関連の在庫を切り分けるパラメータは、おおまかな推定である。売上の割合による代理指標は、ある貸借対照表日の在庫の構成を正確に反映していないかもしれない。
チップの仕様
ダイサイズ、ウェハーあたりのダイ数、ロジックの歩留まり、CoWoSウェハーあたりのパッケージ数、パッケージングの歩留まり、HBMの容量など、チップごとのBOMの仕様は、チップ設計企業やTSMCが開示したものではなく、公開されているチップの仕様、アナリストのレポート、報道から推定している。これらの仕様は個数からウェハーやHBMの消費量への換算に直接影響し、その誤差はすべてのシェアの推定に伝わる。