ニュースレター

リモートワークの自動化がもたらす経済的帰結

原題:The economic consequences of automating remote work

Gradient Updates は著者個人の見解を述べるニュースレターで、Epoch AI 全体の見解とは限りません。

近年のAIの進歩は、自然言語処理や画像認識のような認知的タスクの自動化に大きな可能性を示してきた。それに比べ、汎用ロボットの進歩は遅れている。賢いバーチャルアシスタントはすでに手元で使えるのに、郊外の標準的な住宅を隅々まで掃除できるロボットの実現は、まだ何年も先のことに思える。

ロボット工学の進歩が比較的遅いことを考えると、肉体労働がAIに取って代わられるより前に、知識労働の大部分が自動化されるかもしれない。そうなると当然、次の問いが浮かぶ。リモートワーク、つまりデジタルツール、コンピューター、インターネット接続を使って完全に自宅で行える仕事だけが自動化された場合、経済にはどんな影響がありうるのか。

この問いを検討するため、私は三段階の分析を行う。第一に、GPT-4oを使い、O*NETデータベースに基づいて米国の職業に含まれるタスクを分類する。その結果、職務タスクの約34%がリモートで遂行できることがわかった。これは、米国の職業(タスクではない)の37%が完全にリモートで遂行できるとした、Dingel & Neimanによる研究の以前の結果とは対照的である。

第二に、COVID-19のパンデミック中にリモートワークへ移行したときのデータと、熟練職と非熟練職の補完性のデータを用いて、リモートのタスクが完全に自動化された後でも、リモートでないタスクが生産の大きなボトルネックになる可能性は低いと論じる。経済学の言葉でいえば、リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性はおそらく高いと考えられる。

リモートで遂行できるタスクの割合と、リモートのタスクと非リモートのタスクの代替可能性の両方を推定したうえで、リモートの労働を自動化することによる理論上の経済的利得を計算する。私が検討したすべてのシナリオで効果は大きく、最も控えめなシナリオでも経済規模は2倍になり、最も楽観的なシナリオでは10倍を超えて拡大する。これらのシナリオは、控えめな仮定の下でさえ、リモートワークを完全に自動化することの経済的帰結はおそらく莫大なものになることを示している。

現在の経済活動のうち、どれだけをリモートで行えるか

経済活動のうちリモートで行える割合を推定した研究として、おそらく最もよく知られているのは、Dingel & Neimanによる引用数の多い論文「How Many Jobs Can be Done at Home?」である。2020年のパンデミックを背景に行われたこの研究で、二人はO*NETデータベースに収録された約1000の職業を調べた。O*NETは、現代の仕事の性質をよりよく理解することを目的に、米国労働省の後援で作られた職業データの大規模なデータベースである。

O*NETには豊富なデータがあるが、どの仕事が自宅で行えるかという問いには直接答えていない。そこでDingel & Neimanは、仕事の状況に関する調査の中の代理となる一連の質問を使って、リモートの仕事と非リモートの仕事を独自に分類した。質問には、たとえば次のようなものがある。

  • 回答者の平均が、メールを使うのは月に1回未満だと答えている(Q4)
  • 回答者の平均が、少なくとも週に1回は暴力的な人に対応すると答えている(Q14)
  • 回答者の過半数が、毎日屋外で働いていると答えている(Q17 & Q18)

Dingel & Neimanは、米国の仕事の37%(合わせて米国の賃金総額の約46%を占める)が完全に自宅で行えると結論づけた。二人はこのデータを他国の職業データと照らし合わせ、パンデミック中にさまざまな国で何人が在宅勤務をしたかという自己申告データとよく相関していることを示した。

この分析を検証し、さらに広げるため、私はGPT-4oを使って、O*NETデータベースのすべての職務タスクに、リモートで遂行できるかどうかのラベルを付けることにした(データセットはこちら、方法はこちらを参照)。O*NETデータベースでは、職務タスクは職業よりも基本的な単位である。タスクは仕事の中で行われる具体的な作業活動からなり、複数の職業で共有されていることが多い。タスク単位で見れば、現代経済でリモートワークが果たす役割をより細かく分析できる。自動化によって職業全体が一挙に不要になることはめったにないからだ。自動化はむしろ、機械が遂行できるタスクの範囲を絶えず広げていくものと捉えたほうがよい。

各職務タスクには、その遂行に何が含まれるかを定性的に説明した記述があり、GPT-4oはそれをもとに、そのタスクがリモートで遂行できるか、対面で行う必要があるかを判別できる。妥当性を確かめるため、私は少数のタスクを無作為に選んで手作業で見直し、ラベル付けがおおむね正確であることを確認した。

この分析の結果は私にとって意外なもので、Dingel & Neimanの結果との大きな食い違いが明らかになった。私の分類では職務タスクの34%がリモートで遂行できる一方、最も重要な上位5つのタスクがすべてリモートのタスクとラベル付けされた職業は、約13%にとどまる。各職業で最も重要な上位3つのタスクだけに絞っても、この数字は18%に上がるにすぎない。

これらの結果は、仕事の37%が自宅で行えるというDingel & Neimanの結果と完全には一致していない。では、この食い違いは何によって説明できるのか。もっともらしい仮説の一つは、二つのデータ収集の目的が違っていた、というものだ。Dingel & Neimanの場合、主な目的は、パンデミック中に仕事のどれだけの割合を自宅で行えるかを理解することだった。一方、私の場合の狙いは、経済の中のどのタスクが、コンピューターを操作するAIエージェントによって近いうちに自動化されうるかを、よりよく予測することだった。

パンデミックは通常の環境を混乱させ、どんなサービスならリモートで十分に提供できるかについての私たちの基準を一時的に変えた。パンデミック中に基準がこのように変わったため、Dingel & Neimanの分類と私の分類を比べるのは難しい。この点には、リモートワークの自動化がGDPに与える影響を推定する際に立ち戻る。

リモートワークが自動化されたら、経済はどれだけ成長するか

経済の中のタスクのうちリモートで遂行できる割合を調べたので、次は、これらのタスクが自動化されたら何が起こるかという問いに移る。ただし、この問いに答えるには、まずリモートのタスクと非リモートのタスクの代替可能性を推定する必要がある。経済学の文献では、これは代替弾力性と呼ばれるパラメータで表される。以下で簡単に説明しよう。

代替弾力性の簡単な入門

代替弾力性(σ)は、生産や消費において、あるタスクや財が別のものをどの程度置き換えられるかを定量化する経済学の指標である。この概念の理解が欠かせないのは、自動化が進むにつれて、自動化されたタスクや部門が経済に占める割合がどう変わっていくかを推定するのに役立つからだ。

代替弾力性がなぜ重要なのかを知るため、経済史から例を取ろう。農業である。工業化以前の多くの社会では、農業がGDPの大部分を占めていた。しかし、農業の工程がますます自動化されるにつれ、経済に占める農業の割合は劇的に縮小した。今日の米国では、農業生産はGDPのわずか1〜2%ほどにすぎない。

この例は重要な点を示している。自動化がある部門を変えると、経済全体の中でのその部門の重要性は低下しうるのだ。生産性が上がって産出が増えるにつれ、さらなる効率の向上がGDPに寄与する度合いは次第に小さくなる傾向があるからである。その結果、こうした場合の自動化は、経済成長全体への効果が控えめなものになる。

しかし、このパターンは普遍的ではない。英国の産業革命期の繊維産業を考えてみよう。動力織機や紡績機の導入によって繊維生産ははるかに効率的になり、繊維産業は重要性を失うどころか、英国経済の柱の一つへと成長した。この場合、自動化によって経済に占めるその部門の割合は大きく拡大した。つまり、繊維の自動化は経済成長全体に不釣り合いなほど大きな影響を与えたのである。

農業と繊維という対照的な例は、重要な問いを浮かび上がらせる。リモートワークの自動化が進んだとき、それは農業のパターンをたどり、自動化しやすくなるにつれて経済的な重要性が縮小するのか。それとも繊維のように、自動化が進むにつれて経済的な重要性が増すのか。答えは、リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性(σ)によって決まる。

より具体的には、σ < 1(つまり、生産においてタスク同士を容易に置き換えられない)なら、リモートワークの自動化は農業の場合に似たものになり、自動化されるにつれてGDPに占めるリモートの労働の割合は低下する。逆に、σ > 1(つまり、生産においてタスク同士を比較的容易に置き換えられる)なら、情報労働に支払われるGDPの割合は、自動化されるにつれて増える。

生産関数

次に、総産出に対するリモートワークの寄与に注目して、集計的な生産関数を推定する。生産関数とは、投入と産出の間の経済的な関係である。ここでは、リモートの労働者数、非リモートの労働者数、経済全体の産出の間の関係を指す。

マクロ経済学で経済の生産能力をモデル化するためによく使われる関数形が、CES(代替弾力性一定)生産関数である。この関数は次の形をとる。

ここで、Yは生産水準、Rはリモートの労働者数、Nは非リモートの労働者数である。 はシェアパラメータ、 は代替パラメータである。パラメータAは規模を表すパラメータで、生産性の乗数である「技術」を表すことが多い。

その名のとおり、CES生産関数は、生産要素間の代替弾力性が一定で、投入量が変わっても変化しないと仮定している。代替弾力性は、具体的には次の関係を通じて代替パラメータ と結びついている。

この関数を使えば、リモートワークの自動化が総生産に与える理論上の効果を計算できる。考え方はこうだ。AIがリモートワークで人間を効果的に代替でき、経済全体に広く導入されるなら、この変化はリモートワークの投入 の劇的な増加としてモデル化できる。さらに、AIがリモートの職を埋めるにつれ、職を追われた人間のリモート労働者の一部が非リモートのタスクへうまく移れば、経済の産出はさらに増える。

こうしたモデル化の仮定の下で、この生産関数のパラメータを決め、リモートワークの投入Rを大きな倍数で増やしたときに総産出Yがどれだけ増えるかを計算すれば、リモートワークの自動化が経済に与える影響を推定できる。

残念ながら、CES生産関数のパラメータを当てはめるのは難しいことがある。従来は、横断面データや質の高い長期の時系列データにこの関数を当てはめて行うが、ここではそうしたデータがない。この問題を和らげるため、信頼できる推定値を得るのに使えそうな二つの代替的な方法を検討する。

  1. パンデミックを自然実験として使い、代替弾力性の値を推定する
  2. 代理データを使って代替弾力性を推定する。熟練労働と非熟練労働のデータを調べ、悲観的な下限についても論じる。

パンデミックを使って代替弾力性を推定する

COVID-19のパンデミックは、リモートワークの自動化の効果を理解するうえで、またとない自然実験となった。パンデミック中、労働力の大部分が、対面でのタスク遂行からリモートでのタスク遂行へと突然切り替わった。

リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性が低い、つまりこの二種類のタスクが経済的に補完財として機能するなら、パンデミック中にGDPは大きく落ち込んだはずである。補完的なタスク同士は容易に置き換えられないため、対面の仕事ができなくなれば大きなボトルネックが生じ、経済活動が混乱するからだ。

パンデミック中に実際に起こったことは、多くの経済学者を驚かせた。リモートワークへの劇的な移行があり、それ以前に在宅で働いていたのは労働力のごく一部だったにもかかわらず、GDPの落ち込みは多くの人が予想していたよりはるかに小さかった。2019年第4四半期から2020年第2四半期にかけて、米国のGDPは年率換算で約20.9兆ドルから19.1兆ドルへと減少した。約9.2%の縮小である。この落ち込みは、通常の基準からすれば(ほとんどの景気後退と比べて)深刻だったが、多くの、おそらくは大半の経済学者が予想していたよりは小さかった。

下のグラフを見ると、米国の労働者のおよそ3分の1がリモートワークに移ったことを考えれば、2020年の実質GDPの落ち込みは比較的小さかったことがわかる。1

実際、実質GDPの落ち込みはあまりに小さかったので、その大部分は、他の労働者がリモートワークに移ったのと同時に、何百万人もの人が労働力から完全に退出したことで説明できるのかもしれない。もし誰も労働力から退出せず、労働者のおよそ3分の1がリモートワークに移っただけだったなら、GDPの落ち込みはおそらくかなり小さかっただろう。つまり、何千万人もの人が突然リモートで働くことにしても、GDPにはほとんど影響がなかったのかもしれない。

大きな経済的縮小を起こさずに経済がこうした環境に円滑に適応できたということは、対面のタスクの多くが、以前に多くの人が考えていたよりもはるかにリモートのタスクで置き換えやすかったのかもしれない、ということを意味する。この結果からは、リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性が、多くの経済学者が当初想定していたよりはるかに高いのかもしれないと考えられる。より正確にいえば、このデータを見ると、経済の中のタスクの大部分(ひょっとすると3分の1以上)はリモートのタスクで置き換えやすく、それらのタスクではσ >> 1であるようだ。

この観察は、現代世界の都市化を経済学者が伝統的にどう説明してきたかという文脈で考えると、とりわけ意外である。広く受け入れられている経済理論によれば、人々が大都市に引き寄せられるのは、都市の仕事のほうが、人口密度の低い地域の仕事に比べて一般に生産性が高く、賃金も高いからである。この理論によれば、都市の仕事の生産性の優位は、労働者が多くの人と対面でやり取りできる機会から生まれる。それが相乗効果や協働の利点を生み、農村部や人とのつながりの薄い環境ではそれを再現しにくい、というのである。

この理論に基づけば、パンデミック中のリモートワークへの急な移行によって、労働者が対面のやり取りの利点を失い、生産性が劇的に低下したはずだと予想される。しかし、データはこの予想を裏づけなかった。リモートワークへの移行が広く起こったにもかかわらず、生産性は、この正統的な理論が予測するほど急激には低下しなかった。

ただし、コロナ禍の時期のデータについてのこの解釈が広く受け入れられているわけではなく、データをよりよく説明できるかもしれない別の筋書きもあることには留意しておく価値がある。すなわち、リモートワークへの切り替えによる生産性の損失が小さかったのは、リモートのタスクと非リモートのタスクの代替弾力性が高いからではなく、単にリモートで行えるタスクの割合が非常に高いからだ、ということも十分ありうる。この筋書きでは、平常時に多くの人が対面で働くのは、タスク自体は本来リモートでも行えるのに、対面で働くとわずかに生産性が上がるからにすぎない。

しかし、データについてのこの別の解釈が正しかったとしても、リモートワークの自動化の効果が非常に大きくなるという結論は変わらないはずだ。この別の筋書きはリモートのタスクの割合が大きいことを前提としており、それは同時に、多くの仕事がデジタルなAI労働者に置き換えられうることを意味するからである。二つの異なる解釈が同じ結論を導くので、私の分析の目的にとって、両者の区別はあまり重要ではないはずだ。

私の分析には、これとは別の問題もある。コロナ禍の時期のGDP推計には異論があることだ。前の節で触れたように、パンデミック中に人々がリモートワークに切り替えたとき、その成果物は微妙に変化した。たとえば、医師は診療所の中で患者と話す代わりに遠隔医療を使い始めた。これによって医療の質が下がった可能性があり、その質の違いは公式のGDP統計に十分反映されていないかもしれない。同様の効果は経済全体で見られた。このため、σを測る別の方法を検討する価値がある。

代理変数を使って代替弾力性を推定する

リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性を推定するもう一つの方法は、代理変数となりうるものを調べることだ。これには、さまざまな生産要素の組み合わせについて公表されている代替弾力性の推定値が含まれる。

もっともらしい代理変数の一つは、熟練労働と非熟練労働の間の代替弾力性である。この代理変数が適切に思えるのは、リモートワークがその性質上、筋肉ではなく頭脳を使う仕事だからだ。当然、大学教育を必要とする仕事はとりわけリモートで遂行できる仕事である可能性が高い、と考えてよいだろう。経済学の文献では、この二分法は、少なくとも近似的には、熟練労働と非熟練労働の区別として捉えられることが多い。

最近のあるメタ分析は、72の研究にわたるこのパラメータの推定値682件を検討した。その結果、ほとんどの推定値は1から3の範囲に収まる傾向があった。しかし、低い推定値に偏る出版バイアスも見つかり、真の値は4に近いことが示唆された。4という値が正しければ、この結果は前の節の分析と比較的よく一致する。

それでも、リモートワークと非リモートワークには大きな補完性があるはずだという直観を持つ人は多い。そのため、代替弾力性の控えめな下限を検討する価値がある。私が思いつく限りで最も悲観的な代理変数は、おそらく経済における食料と食料以外の財の関係だろう。人間は生きるために食料を必要とするので、食料を他の経済財で置き換えるのは難しい。飢えている人に食料以外の財、たとえば住居、交通手段、冷蔵設備をいくら豊富に与えても、カロリーを得るという差し迫った必要を満たす助けにはほとんどならない。

しかし、食料の場合でさえ、補完性は無限ではない。食料が他の財に比べて安くなると、人々はカロリーの必要量を満たす最低限の食料を買い続けるだけではない。むしろ、より質の高い、あるいはより好ましい食料を買うために、所得のより多くを充てる傾向がある。研究では、食料と食料以外の財の代替弾力性を約0.5に設定することが多い。私の考えでは、0.5という値は、リモートワークと非リモートワークの間の代替弾力性の悲観的な下限として使える。

まとめ

代替弾力性についての私の見積もりは、悲観的な下限の0.5から、コロナ禍の時期のデータが示唆する1よりはるかに大きな値まで、大きく幅がある。推定値の範囲が広いので、この重要なパラメータの値については、さまざまな可能性を検討するのが便利である。以下に、この範囲の両端を表す二つのシナリオを図示した(このノートブックから取ったもの)。悲観的なケースでは代替弾力性は0.5、楽観的なケースでは10である。どちらのシナリオでも、リモートで行える仕事の割合は当初34%と仮定した(私のデータと一致する値である)。また、デジタルなAI労働者に職を追われた人間のリモート労働者のおよそ50%が、非リモートのタスクに移ると仮定した。

このグラフは、かなり悲観的な仮定の下でさえ、リモートの労働が自動化されれば米国のGDPが2倍になりうることを示している。この成長は、経済の中のリモート労働者の数を100〜1000倍に増やすことで達成でき、それはデータセンターで数百億のデジタル労働者を動かせば起こりうる。2そうした経済の拡大が10年かけて起こるとすれば、平均の年間経済成長率は7%を超えることになる。ロボット工学の進歩やAI以外の経済成長の源泉が加われば、この成長率はさらに押し上げられうる。

しかし、私の考えでは、この悲観的なシナリオは控えめすぎる。代替弾力性が1を下回るという値は、コロナ禍の時期の経済データとも、熟練労働と非熟練労働の間の代替弾力性という代理変数による推定値とも矛盾するように思える。こうした背景となる証拠を踏まえると、リモートワークを完全に自動化することの効果は、おそらく米国のGDPが2倍になるよりはるかに大きくなると私は考える。

結果が最も楽観的なシナリオに近ければ、リモート労働者の数を100〜1000倍に増やすと、実質GDPは10倍を超えて拡大する。実質GDPが10年かけて「わずか」10倍に拡大するシナリオでも、経済成長率は年25%を超え、米国の歴史でこれまでに経験したどんな水準もはるかに上回る。

だが、楽観的なシナリオでさえ、いくつかの控えめな仮定の上に成り立っている。とりわけ、楽観的なシナリオは、CES生産関数でモデル化したとおり、規模に関する収穫一定という仮定に依拠している。この仮定の下では、すべての投入を比例的に増やすと、産出も同じ割合で増える。しかし歴史的な証拠を見ると、世界経済は規模に関して収穫一定ではないようだ。むしろ経済は規模に関する収穫逓増を示しているようであり、人口規模などの投入が増えると技術の進歩が生まれ、それによって資源をより効率的に使えるようになる。

こうした規模に関する収穫逓増が現れうる道筋の一つは、AIシステムがAI自体の研究開発の過程を自動化することである。しかし、この仕組みを狭く捉えすぎるべきではない。経済全体の規模に関する収穫逓増は、AIが他の形の科学的発見や技術革新を自動化し、さまざまな産業にわたる効率のより幅広い向上に寄与することからも生じうる。こうした可能性を経済成長の包括的なモデルに組み込むことは、今後の研究の重要な方向性である。

正確な上限・下限にこだわるよりも、ここで引き出すべき正しい結論は、おそらく、経済成長へのこうした効果が莫大なものになるということだろう。リモートワークが完全に自動化された結果、米国のGDPが2倍を超える可能性は非常に高いと私は考えている。実のところ、米国経済の規模が10倍に拡大する可能性も、私には五分五分よりわずかに高いように思える。これほど劇的な経済の拡大が近い将来か中期的な将来に起これば、それは主流の経済予測をはるかに超えるものであり、人類史における変革的な出来事となるのは間違いない。

注

注
  1. このデータは、米国労働統計局とKevin Drumによるものである。今号のGoogle Colabノートブックでは、このデータを使って、前の節で述べたCES生産関数のパラメータを当てはめている。得られた結果はσ = 12.9という推定値である。このモデルはあまり頑健ではないようで、2008年以降の一国のデータしか考慮していないため、σ = 12.9という正確な値は大いに割り引いて受け取るべきである。この特定の数値について考えるよりも、より基本的な点、つまり2020年にリモートワークが劇的に広がったときに、米国の実質GDPがごくわずかしか落ち込まなかったという点を理解することのほうが重要である。この分析がどこかで誤っていたとしても、主な教訓は、データが1よりはるかに大きなσの値、つまり高い代替弾力性とおおむね整合しているということだ。 ↩

  2. 推論実行(インファレンス)の費用を、たとえば労働者1人当たり10^14 FLOP/sとすると、常時稼働する100億のデジタル労働者を生み出すには、10^24 FLOP/sを実行できる計算資源が必要になる。これは、およそ2億5,000万基のH100が最大効率で並列に稼働するのに相当する。今日の基準では膨大な計算量だが、チップの生産能力に関する現在の予測によれば、そうしたシナリオは2030年代初めに実現しうる。 ↩

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非公式の日本語訳公式ページ(英語):epoch.ai/gradient-updates/consequences-of-automating-remote-work