データインサイト
貿易統計は、30億ドルを超えるチップがマレーシア経由で中国へ密輸されたことと整合する
2024年4月から2025年6月にかけて、中国はマレーシアからのサーバー輸入を、AIサーバー並みの1台あたり8万〜15万ドルという価格で38億ドル計上したが、マレーシア側が計上した対中輸出は6億ドルにすぎない。これが迂回の証明になるわけではないが、このパターンは、仲介業者がAIサーバーをマレーシア経由で送り、輸出書類上は通常のサーバーとして申告していた中国へのチップ密輸の既知の事例と整合する。この流れは、約15万H100換算(H100e)の計算資源の迂回に相当しうる。
両国が報告する移動台数は近い(マレーシアの申告で3万6,700台、中国の記録で3万5,500台)が、その価値については食い違っている。マレーシアを出るときは1台約1万7,000ドル、中国に到着するときは10万6,000ドルである。この流れは、米国がNvidiaのA800/H800 GPUの対中輸出を禁止した数か月後に始まり、マレーシアが高性能AIチップの輸出・積み替えに許可を義務づけてから数週間のうちに崩れた。マレーシアのこの措置は、この取引を抑え込むために予想されていた米国の措置に先手を打つものだった。
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商品が国境を越えるたびに、税関職員は品目コード、金額、そして多くの場合は数量を記録することになっている。本分析では、世界的に採用されている統一システム(HS)の6桁の品目コード(HS-6 847150)で記録されるサーバーについてこのデータを調べた。すると、2024年4月から2025年6月にかけて、中国がマレーシア原産のサーバーを37.5億ドル、平均1台10万6,000ドルで記録していたことがわかった。HS-6 847150にはAIサーバーとAI以外のサーバーの両方が含まれるが、この期間の高い価格は、はるかに高価なAIサーバーのほうとよく整合する。この期間は、2つの重要な政策イベントの間にある。1つは、NvidiaのA800/H800チップの対中輸出に対する2023年10月の輸出規制である。このチップは、それまで中国に合法的に販売できた最高性能のGPUだった。もう1つは、米国原産の高性能AIチップの輸出・積み替え・通過に30日前の事前通知と許可を義務づけた、マレーシア投資貿易産業省(MITI)による2025年7月の指令第1/2025号である。この期間の外では、中国へのマレーシア原産サーバーの輸入はまったく異なる様相を示す。
| 期間 | 月平均の金額 | 1台あたりの平均価格 |
|---|---|---|
| 以前(2022年1月〜2024年3月) | 4,200万ドル | 760ドル |
| 期間中(2024年4月〜2025年6月) | 2億5,000万ドル | 10万5,700ドル |
| 移行期(2025年7〜8月) | 1億2,600万ドル | 7万7,000ドル |
| 以後(2025年9月〜2026年6月) | 5,000万ドル | 1万1,600ドル |
月次データからは、米国の輸出規制の発表後、高水準の流れが始まるまでに約4か月、流れが収まるまでに約2か月かかっていることがわかる。2025年7〜8月の移行期は、指令が効力を持ち始めた時期にあたり、すでに通関済みの貨物、30日の通知期間、輸送期間と整合する。経路そのものと、その収束とを区別するため、この2か月は主要な数値から除外している。含めた場合、合計は40億ドル、計算資源の推定は約16万H100eに増える。
貿易データは輸出国と輸入国の双方から二重に報告されるため、マレーシア自身の記録も確認できる。これには、マレーシアが国連には提出しているが国内では公表していない台数も含まれる(「データ」を参照)。マレーシアの記録は、この取引の数量では中国と一致する(3万6,700台に対して3万5,500台)が、金額では6倍食い違っている。マレーシアを出るときは1台約1万7,000ドル、中国に到着するときは1台10万6,000ドルである。報告国間の食い違いはよくあることである。同じ流れの両側を比較する手法は鏡像貿易統計(mirror trade statistics)と呼ばれ、報告のない国が残す空白を埋めるため、関税逃れを測定するため、そして制裁対象国に商品が仲介者を経由してどのように届くかを追跡するために日常的に用いられている。食い違いにはまったく無害な説明がつくこともある。今回の場合、シンガポールや香港を経由したルート、あるいは別の品目コードへの分類変更が代替の説明として考えられるが、検証したどの説明も満足のいくものではない(「分析」を参照)。さらに、同じ期間にマレーシア原産サーバーの輸入を相当量報告しているほかの国々では、製品構成がまったく異なる。どの仮説でも、その理由は説明がつかない。1台あたりの価格は、中国の10万6,000ドルに対し、米国では1,500ドル、シンガポールでは6,200ドル、香港では1万1,700ドル、日本では2万3,000ドルである。
仮に密輸が行われていたとすれば、この状況は、マレーシアを中継拠点として利用する仲介業者が直面する誘因と整合する。当時の輸出規制が制限していたのは中国への販売であり、マレーシアへの販売ではなかった。また米国は、商品が通過する国々の協力なしには国外で規制を執行できなかった。輸出には課税されないため、通常は税関当局の監査を受けない。したがって密輸業者は、流れに注意を引かないよう、同じ機器を通常のサーバーの価格で申告できたはずである。一方、中国の購入者は中国の法律に違反していなかったため、自国の税関に偽る理由は乏しかった。中国の税関に過少申告すれば、合法的に輸入できる商品について詐欺を働くことになったはずである。こうした行動が、期間中に観察される価格の差を生み出したと考えられ、マレーシアが取引を精査し始めると取引が崩れたことも、この説明を裏づけている。
この取引がどれだけの計算資源に相当しうるかも推定した。通常のサーバーは安価すぎて37.5億ドルのごく一部しか占めえないため、この金額をEpoch AIのチップ販売(Chip Sales)データセットにあるNvidia H100チップの価格で割ると、約15万H100換算(H100e)となる。これは規模感をつかむための大まかな推定である。この値を押し下げる要因は2つある。税関申告額はGPUだけでなくサーバー全体を対象としていること、そして中国での輸入価格には密輸業者が負うリスクに伴う上乗せが反映されている可能性があることである。押し上げる可能性のある要因としては、移動したチップの一部が、よりコスト効率の高いBlackwellであった可能性が挙げられる。さらに、マレーシアを経由した密輸には、申告されていないものや虚偽の価格で申告されたものがあった可能性もある。15万H100eは、Epoch AIによる密輸総量のモデル推定の中央値のおよそ4分の1にあたる。
データ(原文・英語)
- 中国が記録したマレーシア原産サーバー(HS 847150)の輸入(四半期別) CSV・Epoch AI