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ロビン・ドーズの『不確実な世界における合理的選択』より。1太字は引用者による。
ノーマン・R・F・マイアーは、集団が問題に直面すると、メンバーはその問題を話し合い始めるや否や、考えられる解決策を提案しがちだと指摘した。その結果、集団でのやり取りは提案された解決策の長所と問題点に集中し、人々は自分が出した案に感情的な愛着をもち、より優れた解決策は提案されなくなる。マイアーは、集団での問題解決を改善するため、次の掟を設けた。「解決策を一つも提案せずに問題をできるかぎり徹底的に話し合い終えるまでは、解決策を提案してはならない」。問題に対するよい解決策が客観的に定義できる状況では、この掟が有効なことは簡単に示せる。
マイアーは自分の主張を示すため、次の「ロールプレイ」実験を考案した。能力の異なる3人の従業員が、組立ラインで働いている。彼らは、必要な能力の水準が異なる三つの仕事を交代で担当している。もっとも能力の高い従業員は、同時にもっとも発言力が強く、退屈を避けたいという思いが強いからだ。一方、もっとも能力の低い従業員は、難しい仕事ではほかの2人ほどうまくできないと自覚しているが、能力の高い同僚の発言力に押され、交代制に同意している。「効率化の専門家」は、もっとも能力の高い従業員にもっとも難しい仕事を、もっとも能力の低い従業員にもっとも簡単な仕事を割り当てれば、生産性を20%改善できると指摘し、交代制をやめるよう勧める。3人の従業員と……職長役を割り当てられた4人目の人物に、この専門家の提案を話し合ってもらう。ロールプレイのグループの一部には、問題を徹底的に話し合うまでは解決策を話し合わないというマイアーの掟を伝え、ほかのグループには伝えない。掟を伝えられなかったグループは、直ちに、生産性と従業員の自主性や退屈の回避のどちらが重要かを議論し始める。掟を伝えられたグループは、能力の高い2人が交代し、もっとも能力の低い1人はもっとも負担の小さい仕事に専念する、という解決策に到達する確率がはるかに高い。この解決策なら、生産性は19%向上する。
私は自分が率いるグループで、この掟をよく使ってきた。特に非常に難しい問題に直面したときに使う。そういうときこそ、メンバーはすぐに解決策を出したがるからだ。グループの問題解決の質を判断する客観的な基準はないが、マイアーの掟は、よりよい解決策につながるように見える。
これは、笑いごとにならないほど本当だ。そして問題が難しくなればなるほど、事態は悪化する。たとえば人工知能だ。私が会う人の驚くほど多くが、たとえば光学式文字認識装置や協調フィルタリングシステムという、はるかに易しいものの作り方も知らないのに、汎用人工知能の作り方は正確にわかっているようなのだ。そして世界によい影響を与えるAI——大ざっぱにいえば友好的AI——を作るとなると、いやはや、この問題はあまりにも難しいものだから、実際には過半数の人が、15秒以内にすべて片づけてしまう。いい加減にしてくれ。
これはAIだけの問題ではまったくない。物理学者は、独自の物理理論をもつ非専門家に山ほど出会う。経済学者は、驚くべき新しい経済理論をたくさん聞かされる。進化生物学者なら、会う人は誰でも、たいていは群選択を持ち出して、その分野の未解決問題を何でも即座に解いてしまう。等々。
マイアーの助言は、結論の一行の原則と響き合う。私たちの判断の有効性を決めるのは、その判断に最初に至るまでに使った証拠と処理だけだ。結論の一行を書いてしまってから、その上に理由を書き足そうとしても遅すぎる。ごく早い段階で決めてしまえば、その後でどれほど見事な議論を思いつこうと、その判断は実際には、ごくわずかな思考に基づいたものになる。
さらに、私たちは思っているほど考えを変えないことも考えてみよう。24人が、将来自分が選ぶ可能性が高いと思う選択肢に平均66%の確率を割り当てたが、実際に可能性が低いと思っていたほうを選んだのは24人中1人だけだった。自分がどんな答えを出すか見当がつくようになった時点で、おそらくあなたはもう決めている。質問を聞いて0.5秒後に自分の答えを予想できるなら、知性を働かせる時間は0.5秒しかない。決して長い時間ではない。
伝統的合理性は、反証を重視する。明確な反対証拠に直面したとき、最初の意見を手放す能力だ。だが、ひとたび考えが頭に入ると、それを再び追い出すには、おそらくあまりにも多くの証拠が要る。さらに悪いことに、圧倒的な証拠にいつでも恵まれるわけではない。
より強力な、そしてより難しい方法は、答えを考えるのを保留することではないかと思う。自分の答えがまだ予想できない、あのごく短い瞬間を留め、引き延ばすのだ。そうすれば、知性が働く時間を長くできる。
30秒でも、0.5秒よりはましだろう。
Dawes, Rational Choice in An Uncertain World, 55–56. ↩