ニュースレター
フロンティアAI企業の求人情報から、その計画について何がわかるか?
原題:What do frontier AI companies' job postings reveal about their plans?
Gradient Updates は著者個人の見解を述べるニュースレターで、Epoch AI 全体の見解とは限りません。
AI企業は戦略を厳重に秘密にしている。しかし、採用ページは公開されている。
そして、そこに載っている求人には、企業がどんな製品を開発しているのか、誰に売りたいのか、どんなボトルネックが迫っていると見ているのかについての手がかりが含まれている。「Camera ISP Software Engineer」の求人は、カメラ付きのデバイスの開発を思わせる。「Forward Deployed Engineer」の募集は、企業の内部にAIを導入することの難しさをうかがわせる。ロボット工学に触れた職がまとまって出ていれば、チャットボットをはるかに超えた野心がうかがえる。
私たちは、OpenAI、Anthropic、xAI、Google DeepMind を含む主要な基盤モデル研究所の募集中の職を分析した1。わかったことは次のとおりである。
- 第一に、この1年で、Anthropic と OpenAI の両社で営業と営業関連の採用が急増した。募集中の職に占める市場開拓職の割合は、Anthropic では17%から31%に、OpenAI では18%から28%に増えた。この増加は特に、顧客企業がAIを社内に導入するのを支援する技術職に集中している。
- 第二に、募集中の職からは研究所の製品ロードマップについての洞察が得られる。たとえば、OpenAI と DeepMind はいずれも、ロボットや消費者向けデバイスといったハードウェア製品に投資している。これに対し、Anthropic は中核製品の改善に注力しているようである。
- 第三に、採用ページは、主要なAI企業が計算資源やデータといった主要な投入物を獲得するためにどのように異なる戦略をとっているかについても洞察を与えてくれる。たとえば、OpenAI には独自チップ(カスタムシリコン)に関連する募集中の職が21あるが、自社チップを開発する社内の取り組みを持たない Anthropic には一つもない。
本題に入る前に、いくつか注意点がある。求人情報からわかるのは、企業が埋めようとしている職であって、現在の人員ではない。たとえば、募集中の職が20あるチームは、大規模で拡大中のチームかもしれないし、まだ存在しないまったく新しいチームかもしれない。また、それぞれの求人で何人が採用されるかもわからない。「Research Engineer」の求人1件で、採用が1人のこともあれば10人のこともあり、一度も埋まらないこともありうる。
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OpenAI と Anthropic で最大の採用区分は市場開拓である
この1年で、Anthropic と OpenAI の両社で営業と営業関連の採用が急増した。募集中の職に占める市場開拓専門の職の割合は、Anthropic では17%から31%に、OpenAI では18%から28%に増えた。売上が急増し、ほぼ手つかずの市場を奪い合っている企業としては意外ではないかもしれないが、今や両社とも、営業関連の職が募集中の職の最大の区分になっている。これに対し、研究職は現在、募集中の職のうち Anthropic で12%、OpenAI では7%にすぎない。

特に急速に増えている下位区分が一つある。顧客がAIを実際に導入するのを支援することに特化した技術職である。両社は現在、AI Success Engineer、Partner AI Deployment Engineer、Solutions Architect、Forward Deployed Engineer といった職を募集している。これらは、顧客がAIを活用する機会を見つけ、それを事業に組み込むのを助けるための職である。この1年で、導入支援に特化した職が募集中の職に占める割合は、Anthropic では5%から11%に、OpenAI では11%から17%に増えた。ここからは、顧客が OpenAI や Anthropic の製品を十分に使いこなせずに苦労しており、その溝を埋めるには、何ができるのかを顧客に教えることが重要だと考えられる。
営業職の地理的な分布からも、これらの企業が自社の市場をどこに見ているかがわかる。各社の営業職の半分以上は米国にあり、その割合は Anthropic で52%、OpenAI で55%である。どちらの企業も地域別の売上の内訳を公表していないが、採用の集中ぶりからは、Anthropic と OpenAI の両社にとって、米国が依然として圧倒的に主要な市場であることがうかがえる。
国際的には、両社ともヨーロッパとアジア太平洋で積極的に採用している。Anthropic はヨーロッパ寄りで、募集中の営業職の29%がヨーロッパにある(OpenAI は21%)。OpenAI はアジア太平洋寄りで、24%である(Anthropic は19%)。アジア太平洋の中では、増加は日本、韓国、インド、シンガポール、オーストラリアに集中している。中国、中東、中南米、アフリカが含まれていないのは注目に値する。研究所が世界的な営業に注力していることから見て、ヨーロッパやアジア太平洋の市場で各国の有力企業に締め出されるとは予想していないようだ。
政府向けの営業も重要な優先事項のようである。OpenAI と Anthropic はともに、連邦政府の非軍事部門、国防、州・地方政府を担当する営業職を10ずつ募集している。これらのうち、OpenAI では1つが国家安全保障を特に対象としており、Anthropic では2つが国家安全保障を特に対象としている。xAI は、外国政府を対象とする営業職をロンドンとドバイに2つ、米国政府を対象とする職を1つ募集している。これらの職は、基盤モデル研究所にとって政府が将来の重要な収入源であることを示している。
Anthropic、OpenAI、xAI では、募集中の営業職からAI研究所の現在の市場開拓の優先事項がうかがえるが、DeepMind の求人広告からは営業活動についてほとんど何もわからない。Gemini の販売は Google の既存の営業組織が担っているからである。
求人情報は OpenAI と DeepMind の新製品への賭けを照らし出す
募集中の職は、各研究所が何を作っているのかをのぞく窓にもなる。Anthropic には Claude Code の改善を目的とする5つの募集中のプロダクトおよびエンジニアリングの職があり、OpenAI には Codex の改善を目的とする同様の職が10ある。OpenAI と Anthropic はいずれも、金融サービス向けの製品アドオンの開発に特化したエンジニアリング職を1つずつ募集している。OpenAI はまた、ChatGPT Health と OpenAI for Healthcare の新機能を対象とする3つの職も募集している。
とはいえ、既存の製品については、求人情報から見える姿は不完全である。ある職が既存の機能を拡張するものなのか、新しいものを作るものなのかを見分けるのは難しいことがあり、プラットフォームやインフラの職は複数の製品にまたがることが多い。したがって、求人情報が最も参考になるのは、新たな賭けを明らかにするときである。
第一に、OpenAI の求人からは、同社が消費者向けハードウェアのデバイスに多額の投資をしていることがわかる。このプロジェクトの募集中の職は15ある。求人からは、そのデバイスがどのようなものかがかなりわかる。Camera ISP Software Engineer の職はバッテリー駆動の携帯型デバイス向けの撮像システムの構築について述べている。Research Engineer の職はトランスフォーマーモデルをデバイス上で直接動かすことを扱い、Operating Systems Engineer の職は独自チップに言及している。これらの職を総合すると、カメラを搭載し、独自のAIチップで動き、エッジでAIモデルを動かすように設計された携帯型デバイスのようなものがうかがえる。さらに、シンガポールを拠点とするハードウェアとオペレーションの2つの採用は、製造に向けた動きだと考えられる。DeepMind もハードウェアに賭けており、XRグラスの開発のための職を2つ募集している。そのうち1つからは、音声コマンドが主要な操作方法になることがうかがえる。
第二に、OpenAI と DeepMind はいずれもロボット工学に賭けている。OpenAI にはロボット工学の職が7つあり、大規模なシミュレーションでのロボットの学習やシミュレーションの現実性の向上に取り組んでいることを示している。求人からは、一部のロボットに柔らかい部品や外装が使われるかもしれないこと、そして生産が拡大していることもうかがえる。DeepMind はロボット工学のプログラムに特化した職を9つ募集しており、器用な手を持つ人型ロボットを作っていることがうかがえる。
ハードウェア以外では、OpenAI にはソーシャル製品を扱う初期育成段階の職が2つあり、人々の訓練、スキルの認定、雇用主とのマッチングを支援するように設計された求人プラットフォームのための職も1つある。Anthropic には、まったく新しい製品カテゴリーを生み出すことに特化した研究部門の汎用プロダクトマネージャーの職と、新しい消費者向け製品の開発を目的とするもう1つの職がある。
求人情報は、研究所が計算資源とデータをどう確保しているかの手がかりにもなる
研究所の募集中の職からは、各社が原材料となる投入物、つまり計算資源とデータにどう取り組んでいるかもうかがえる。最もはっきりした違いは、計算インフラを自前で構築している研究所と、外部と契約して調達している研究所の違いである。
OpenAI には、社内のチップ開発の取り組みに関連する募集中の職が21あり、その大半はエンジニアリング職である。これは現在掲載されている職の3%にあたる。独自チップを開発していない Anthropic は、別の道をとっている。外部のパートナーとともにデータセンターの設計と建設を監督することを主な任務とする職が複数ある。たとえば、外部企業による冷却・機械システムの設計を指揮する Data Center Mechanical Engineer や、Anthropic の技術要件と外部の納入パートナーとの橋渡しを担う Data Center Design Execution Lead である。Anthropic にはまた、データセンターやコロケーションの契約交渉に特化した法務職が3つある。
採用で目立つもう一つの投入物は、強化学習の学習環境である。Anthropic には、モデルに新しい能力を学習させるための環境の構築を担う職が複数ある。たとえば、強化学習の環境を構築し、外部業者との関係を管理する Environment Scaling チームや、エージェント的な学習のための、きわめて現実的で長い時間軸の設定を構築する Universes チームである。OpenAI も、自己対戦、シミュレータ、合成フィードバックを使った強化学習の学習手法を開発する Synthetic RL チームの研究者を募集している。
人間によるラベル付け専門の職を持たない OpenAI、Anthropic、DeepMind とは対照的に、xAI の採用からは、人間によるデータについて独特のやり方がうかがえる。人間によるデータの募集中の職が27あり、データのラベル付け作業を社内にとどめておくことを好んでいるようだ。xAI がこうした職を公然と募集することに抵抗がない点も注目に値する。他の研究所も大規模な人間によるラベル付けに頼っているが、外部に委託するか、採用をあまり目立たないようにする傾向がある。
結論
求人情報は不完全なシグナルだが、主要なAI研究所がどう変化しているかを外からのぞける数少ない窓の一つである。現在それが描き出しているのは、製品の販売と導入に多額の投資をし、新しい製品カテゴリーへと多角化し、計算資源やデータといった主要な投入物をめぐって競い合う企業の姿である。研究所が成長を続け、戦略が分かれていくなかで、採用ページはそれを見守るのに最適な場所の一つであり続けるだろう。
有益なコメントと編集をしてくれた Lynette Bye に感謝する。
注
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このデータは2026年3月初めに収集した。 ↩