非公式日本語訳 — 原著者・発行元による公式の翻訳ではありません

Eliezer Yudkowsky — 非公式日本語訳

対応バイアス

Correspondence Bias

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対応バイアスとは、行動が起きた状況によって完全に説明できるにもかかわらず、その行動から、その人に固有の持続的な性向を推測する傾向である。

私たちは、他人の行動と性格のあいだに、あまりにも直接的な対応を見いだしがちだ。誰かが、目に見える理由もないのに自動販売機を蹴っていると、「怒りっぽい人なのだ」と思う。だが、あなた自身が自動販売機を蹴るのは、バスが遅れ、電車が早く出てしまい、報告書の締め切りを過ぎ、そのうえ、この忌々しい自動販売機に2日続けて昼食代を飲まれたからだ。そりゃあ、そんな状況なら誰だって自動販売機を蹴るだろう、とあなたは思う。

私たちは自分の行動を状況のせいにし、自分の振る舞いを経験に対するまったく普通の反応だと考える。だが、他人が自動販売機を蹴っていても、その人の過去が後ろの空中に連なって見えるわけではない。こちらには理由もわからず、ただ蹴る姿だけが見える。そして、何の挑発もないのに攻撃的に振る舞ったのだから、生来怒りっぽい人に違いないと思う。

それでも、事前確率を考えてみてほしい。この世には、生まれつき異常に怒りやすく、そのためときどき自発的に自動販売機を蹴る突然変異体より、遅れるバスのほうが多い。もっとも、平均的な人間も、実際には突然変異体ではある。記憶が正しければ、平均的な個人には、身体に発現する突然変異が2個から10個ある。だが、DNAの特定の箇所に影響が出る確率はとても低い。同じように、人の性向の特定の側面も、おそらく平均からそう大きくは外れていない。そうでないと主張するなら、その低い事前確率という重荷を背負うことになる。

状況的な原因をはっきり教えられてさえ、人々は観察した行動を適切に割り引けないらしい。妊娠中絶に賛成または反対する演説をした人が、無作為に割り当てられた立場で話していたと伝えられても、被験者はなお、その話者が割り当てられた方向に傾いていると考える。2

雨を水の精霊で説明すること、火を、燃える物質から火の物質(フロギストン)が出てくることとして説明すること、薬の催眠効果を「眠らせる力」が含まれているからだと説明することは、とても直感的に思える。現実は通常、もっと複雑な仕組みを伴う。雨の背後には蒸発と凝結の循環があり、火の背後には酸化による燃焼があり、催眠薬は神経系と化学的に相互作用する。だが、仕組みは本質より複雑に聞こえる。考えつきにくく、思い浮かびにくい。だから、誰かが自動販売機を蹴ると、生まれつき自動販売機を蹴る傾向があるのだと思う。

ただし、蹴っている「誰か」が自分自身なら話は別だ。その場合は、状況を考えれば、まったく普通に振る舞っているのであり、ほかの誰だって同じことをするはずだ。実際、私たちは、他人が自分と同じ反応をする可能性を過大評価する。これが「偽の合意効果」だ。飲酒する学生は、学生仲間のうち飲酒する人の割合をかなり過大評価し、飲まない学生は、かなり過小評価する。「根本的な帰属の誤り」とは、他人の行動をその性向に帰属しすぎる一方、自分についてはこの傾向を逆転させることをいう。

人がなぜそのように行動するのかを理解するには、まず、誰もが自分は普通に振る舞っていると考えていることに気づかなければならない。目に見える行動に直接対応する、どんな奇妙な突然変異的性向を生まれもっているのか、と問うのはやめよう。それより、その人は自分がどんな状況にいると見ているのか、と問おう。確かに人には性向がある。だが、目にする表面的な行動のすべてを直接説明できるほど多くの、遺伝する性向の癖があるわけではない。

赤と緑、二つのボタンがついた操作装置をあなたに渡したとする。赤いボタンは世界を破壊し、緑のボタンは赤いボタンが押されるのを防ぐ。どちらを押すだろうか。緑だ。それ以外の答えをする人は、おそらく問いを複雑に考えすぎている。

それなのに私は、ときどき、なぜ世界を救いたいのかと聞かれる。まるで、幼少期に心的外傷を負ったか何かに違いない、とでもいうように。実際、かなり当たり前の判断に思えるのだが……状況をそのように捉えているなら。

私には説明の必要な、平均的でない見方があるのかもしれない。ほとんどの人が信じないのに、なぜそんなことを信じているのか、と。だが、その信念を前提にすれば、私の反応には、特別な説明は要らないように思える。私も偽の合意の犠牲者なのかもしれない。状況をそのように捉えたときに緑のボタンを押す人の数を、過大評価しているのかもしれない。だが、それでも、少なくともかなりの少数派にはなるほうに私は賭ける。

大部分の人は、内側から見れば、自分をまったく普通だと思っている。あなたが憎む人、恐ろしいことをする人も、例外的な突然変異体ではない。悲しいことに、突然変異など必要ないのだ。このことがわかれば、人間の世界で起こる出来事に驚かなくなる準備ができる。

Daniel T. Gilbert and Patrick S. Malone, “The Correspondence Bias,” Psychological Bulletin 117, no. 1 (1995): 21–38, http://wjh-www.harvard.edu/~dtg/Gilbert%20&%20Malone%20%28CORRESPONDENCE%20BIAS%29.pdf. ↩

Edward E. Jones and Victor A. Harris, “The Attribution of Attitudes,” Journal of Experimental Social Psychology 3 (1967): 1–24, http://www.radford.edu/­~jaspelme/­443/­spring-2007/­Articles/­Jones_n_Harris_1967.pdf. ↩