非公式日本語訳 — 原著者・発行元による公式の翻訳ではありません

Eliezer Yudkowsky — 非公式日本語訳

説明する、崇める、無視する?

Explain/Worship/Ignore?

❦

私たちの部族が果樹や獲物を探して草原を歩き回っていると、ときおり空から水が降ってくる。

「どうして、ときどき空から水が落ちてくるの?」と、私は部族のひげを生やした賢者に尋ねる。

そんな疑問はそれまで思いついたこともなかったので、彼はしばらく考えてから言う。「ときおり空の精霊たちが戦う。すると、その血が空からしたたり落ちてくるのだ」

「空の精霊たちはどこから来たの?」と、私は尋ねる。

彼はささやき声になる。「時の始まりよりも前からだ。遠い、遠い昔からだ」

雨が降って、その理由がわからないとき、あなたにはいくつかの選択肢がある。第一に、単に理由を問わずにすませてもよい。その問いを追究しないか、そもそも問いを思いつかない。これが「無視する」コマンドで、ひげの賢者がもともと選んでいたものだ。第二に、何らかの説明を考え出そうとしてもよい。「説明する」コマンドだ。ひげの賢者は、あなたの最初の質問に答えるときこれを使った。第三に、神秘めいた感じを楽しんでもよい。これが「崇める」コマンドだ。

さて、この話を聞けばきっと気づくように、「説明する」を選ぶたびに、最もうまくいった場合に得られるのは「空の精霊」のような説明だ。ところが、その説明自体についても同じ選択を迫られる。説明するか、崇めるか、無視するか? 「説明する」を押すたびに、科学はしばらくせっせと処理し、説明を返す。そして、また別のダイアログボックスが現れる。善き合理主義者である私たちは「説明する」を押し続けるのが務めだと感じるが、それは終わりのない道に思える。

生命について「説明する」を押すと、化学が返ってくる。化学について「説明する」を押すと、原子が返ってくる。原子について「説明する」を押すと、電子と原子核が返ってくる。原子核について「説明する」を押すと、量子色力学とクォークが返ってくる。クォークがどうやって存在するに至ったかについて「説明する」を押すと、ビッグバンが返ってくる……。

ビッグバンについて「説明する」を押して、科学がその処理を進めるのを待つこともできる。いつか、まったく申し分のない説明が返ってくるかもしれない。だが、そうなれば、また別のダイアログボックスが現れるだけだ。だから、十分長く続ければ、いずれは特別なダイアログボックス、新しい選択肢、「説明を必要としない説明」、この連鎖が終わる場所に行き着くはずだ。そして、これこそが知るに値する唯一の説明なのかもしれない。

ほら、今、私は「崇める」を押した。

何かを崇める方法は、祭壇の周囲にろうそくをともす以外にも、はるかにたくさんある。そのことを忘れてはいけない。

もし私が「ふむ、確かに逆説めいて見えるな。この見かけの逆説は、どう解消されるのだろう?」と言っていたなら、「説明する」を押したことになる。こちらは、答えが出るまでに時間のかかることもある。

そして、そもそもこの問題は重要でない、関係がないと思ったり、明日まで考えるのを先延ばししたいと思ったりしたなら、あなたは「無視する」を押したのだ。

賢く選んでほしい。